「恋愛というよりはSF青春恋愛映画」君の名は。 yosif35さんの映画レビュー(感想・評価)
恋愛というよりはSF青春恋愛映画
恋をした時に、顔がタイプとか優しいとかそれだけではない「何か」を「運命」と言い換えることがある。
今作は青春恋愛ものではあるが、三つ葉と瀧が入れ替わる上に、過去と未来が交わり彗星からの被害を食い止めるという壮大なSF映画としての側面も強い。
しかし入れ替わりという夢のような出来事は、やはり夢のように儚い。朝起きた時に、あんなに楽しんだ夢なのにどんな夢を見たのか分からなくなってしまうかのように、2人とも相手のことを忘れてしまう。
だが「何か」を夢のように体験していたことは2人とも覚えている。それが何なのかはサッパリ分からず日常を過ごしてきた。そんなある日、電車ですれ違った瞬間に「何か」を2人は感じ出会う。その2人が忘れてしまった「何か」の物語を私たちは見ていたのだ。
この名状し難い「何か」は私たちだって恋人に対して感じることがあるし、感じた人も居るでしょう。自分には当てはまりそうにもない不思議な恋のお話なのに、もしかしたら私たちが感じた「何か」のウラには三葉と瀧のような壮大な物語の末に恋人と出会ったのかも知れない。
そういう置き換えが出来るところが今作の良いところだと感じましたね。
> もしかしたら私たちが感じた「何か」のウラには
> 三葉と瀧のような壮大な物語の末に恋人と出会ったのかも知れない。
そうですよね!
日本文学の学者が『君の名は。』について書いていて、平安時代の運命感と通ずるものがあると言ってました。現世で惹かれ合うのは前世で縁が合ったからだ、という考え方です。『君の名は。』も、運命的な出会いをした男女が「忘れているけど自分たちは以前こういうふうに出会ってたんじゃないか」というファンタジー、と受止めてもいいですよね。
この映画を観て、失ってしまったものへの憧憬のような切ない感じがするのは、そういう感じと関係がるのかも知れないと思いました。