「2人が惹かれ合った理由」君の名は。 あひるさんの映画レビュー(感想・評価)
2人が惹かれ合った理由
2回鑑賞。
最初のタイトルバックで三葉の巫女姿を観た時に、ただの青春ラブコメじゃない予感はしていたけれど、中盤で三葉の運命を知らされた時にはやはり愕然とした。
そして、そこから運命を変えてやろうと2人が必死になって駆け回る様子には自然と力が入った。
手元のハンカチがいつの間にかヨレヨレになっていた。
一度目に観た時には、確かに瀧と三葉がいつ惹かれ合ったのかがわかりにくく、唐突な感じがした。でも、自分なりに消化して二度目に観た時には、画面の中にちゃんと描かれているのがわかった。
三葉が瀧に惹かれたのは、その行動力だ。
政治家の父や神社という家業に委縮して本当の自分を出せず、今の環境から逃げたい逃げたいとだけ思っていた三葉。
入れ替わった瀧がクラスメイトにたてついたり、ただのベンチではないカフェを友人と作り上げたりと、今ある環境を自分なりに変えていくことは三葉には出来なかったことで、それが憧れに繋がっていったのだろう。
瀧が三葉に惹かれたのは、コミュニケーション力だ。
根は優しいけれど、ケンカ早くて武骨で、あまり社交的ではない瀧。
でも入れ替わった三葉は、ロクに話せたこともない憧れの先輩とも、男友達ともすぐに仲良くなり、むしろ自分よりも好かれている節もある。
「俺の人間関係変えるな!」と怒りつつ、三葉に憧れていったのではないか。
そして、ターニングポイントはあのご神体にお参りしたところだ。
三葉を育んだ「ムスビ」という思想。
瀧は三葉が地元で抱えている葛藤や背負っているものがあそこで腑に落ちて、一気に身近な存在になったのだと思う。
その過程を丁寧に描くことも多分出来たけれど、それよりもコメディーの中でスピードを落とさず一気に見せることを、新海監督は選んだのだろう。
これまでの監督作品は、2人が近付き離れる過程、ちょっとした心の揺れをこれでもかというくらい丁寧に描くものが多かったので、今回はかなりの挑戦をしたのではないか。
わたしにはそれが、心地良かった。
この映画に出会えて良かった。