「協力する事に理由はいらない」君の名は。 ゼリグさんの映画レビュー(感想・評価)
協力する事に理由はいらない
僕は普段あまりアニメ映画を観ることが無く、ジブリアニメぐらいしか知らないのですが、ひとつ思ったのは宮崎駿とは作り方が違うなあという事でした。
宮崎駿は何ヶ所かの描きたい「シークエンス」を考えて、そのシーンとシーンを繋ぐための話を後から付け足していく方法で作っているのですが、新海誠の場合はおそらく「景色」から考えていったのではないかなと思いました。
それぐらいに美しい「景色」が作品としての重要な立ち位置にあったと思います。
監督の考えとしては、まず舞台があり、その後に脚本があり、そしてキャラクターがあるのではないでしょうか。
そう思えてならないほどに、全てのシーンが美しく、アニメならではだなと思いました。
とは言っても、僕は大してアニメを知らず「映画」として見る事しか出来ないので、ずっと「人物の挙動」について見ていました。
僕が関心したのは、三葉になった瀧がおばあちゃんと妹と共に山を登るシーンです。
ここで、瀧がおばあちゃんをおんぶするんですが、それを「三葉の姿になっているから」ではなく、瀧の行動そのものとして描いています。
また、おばあちゃんが川を渡るシーンにおいても、瀧は躊躇なく川に下り、石の上を渡るおばあちゃんの手を引いてエスコートしています。
言葉ではなく運動で、瀧の人間性というものを現しているのです。
大変素晴らしいと思います。
話は変わりますが、三葉と瀧にはそれぞれ「協力者」が居ますが、この人々の描写がまた良いんです。
友達だから一緒に田舎へ行く。
友達だから共犯者になる。
問答などなく、反対することもなく、よくわからない事に協力してくれるのは、ただただ「友達」だから。
彼ら、また彼女たちには、三葉と瀧にあそこまで協力する理由が大して無いのです。
僕が映画を見ていて最も感動するのはこういう描写なんです。
とても素晴らしい作品だと思います。
言葉でなく行動で登場人物の人間性を表すってちゃんとしたアニメや映画なら当たり前のことですよ。言葉で説明するしかできないような質の低い映画しか見たことがないのでしょうか?