「チャカとシャブ、どっちが大事なんですか?」日本で一番悪い奴ら 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
チャカとシャブ、どっちが大事なんですか?
北海道警察が起こした史上最大の組織犯罪録。
柔道経験から北海道警察の刑事となった、諸星要一の出世と失墜。
『孤狼の血LEVEL2』の予習として観ましたが、警察とヤクザの癒着や警察内部の闇など合致する部分も多い白石監督らしい作品でした。
公共の安全を守り市民の平和を実現するべく、熱意を持って道警に入った諸星。
真面目で熱血がゆえに悪の道に足を踏み入れていく主人公像には、綾野剛が適役だった。
星を上げるために違法捜査を続け、金と拳銃に心を奪われ、クスリに手を出してズブズブと堕ちていく。
あんなにもシャブは絶対ダメだと豪語していた諸星が、一回くらい良いだろうとやったことでヤク漬けとなってしまう、クスリの恐ろしさが伝わってきた。
諸星がシャブを決めてから、目の焦点が合わず今までの諸星とは何かが違う、綾野剛の芝居がめちゃくちゃ上手い。
ヤクザの抗争や警察との対立といったような話ではないため、思ったほど死亡者は多くなかったが、アップテンポの前半に比べて暗い後半は精神的に死んでいく彼らの姿が強調されていて生々しかった。
そして最後の「諸星以外の道警関係者は未だ誰一人として逮捕されていない」という一文にゾッとする。
歴史は繰り返される。
村井が諸星に言ったことを、諸星は部下の小坂(中村倫也)に言おうとしていた。
まあ、つまりそういうことだよね。
↓以下余談
・村井の「公共の平和守りたいんなら産婦人科医になれ」という狂気のこもった言葉。あれ、鴻鳥先生…?
・逮捕前に拳銃構えて記念写真も狂気。
・パキスタン人のラシード好きだなと思ったら日本人の芸人だった(ブラジルとのハーフらしい)。お笑い疎いので知りませんでした。
・いつもヤクザのイメージの勝矢さんが、この手の映画でこういう役ってのも新鮮。
・劇中流れるロマンポルノは『花と蛇』
・重く終わった映画をスカパラの陽気なエンディングがぶち壊すのもセンスあり。