「独特なコメディ」ヘイル、シーザー! SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
独特なコメディ
すごく凝った映画だということは分かる。
劇中劇で1950年代テイストのハリウッド映画がたくさん出てきて、この映画そのものも、そういうテイストになっている。
監督はそういう古っぽい映画が大好きで、コメディの様式でそういうのをたくさん作ったんじゃないかな。
たぶん、実際の大スターをモデルにしたキャラがたくさん出てるんだろうなー、とか、共産主義者とかの話は、歴史的背景が分かってるともっと面白いんだろうなー、と思いながら観てた。
要するに、「何かのパロディ」なんだろうけど、パロディの元が分からないから、いまいちよく分からなかった。
まあ、分からないなりに、どこか間が抜けていて、奇妙な世界観、王道展開をあえて外してくる、人をくったような脚本は面白かった。
主人公の、神父への告白は印象的。
「大変で私生活を犠牲にする、割りに合わない仕事」と、「楽で家族サービスもできるし、給料もいい仕事」。どう考えても後者の方がいいけど、なぜだか思い切れない。
そこで神父は、自分の良心に従いなさい、的なことを言う。
そうなんだよね。うまく言葉にできないけど、なぜだか「こっちが正しい」と思うようなことはあると思う。
そんなとき、神父さんの言葉は奥が深いと思うし、主人公の奥さんも、主人公の考えを強制しようとはしなかった。
もしかしたらこれって、監督自身の心情なのかも…。
多くの表現者は、たぶん同じ葛藤を抱えてるよね。「どうしてこんなに苦労して、俺はこの仕事やってるんだろう? もっと割りのいい仕事はいくらでもあるのに…」って。
自分にしかできない仕事、自分らしく生きることができる仕事を見つけることができたら、素敵だなあと思う。