「迷子」リップヴァンウィンクルの花嫁 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
迷子
「ここはどこですか?…私はどこに行けばいいんですか?」
「今後の日本について書きたいという衝動が沸き起こったんです」とこの映画について監督が語る(インタビュー記事から)。
まさしく、現代のある日本の情景。
後半の設定こそ奇抜だが、それぞれが抱える不安と孤独が描かれている。
SNSでの結婚紹介サービス。
ネットでつながる教師と生徒。
ある一定ライン以上は、踏み込まれない安心感。
何でも屋…お金で買えるサービス。
知り合いに頼むより、面倒くさくなくて、便利だもの。
「なんで相談しなかった!」と怒る割には、相談に乗る姿勢を見せない相方。でも、自分では気が付いていない自分勝手な男。…ワンオペママが抱えている苦悩。
不倫調査。別れさせ屋。実在するサービス。
喧嘩の仕方を知らない大人。
そりゃそうだ、子どものころ、大人に管理されて育ち、喧嘩なんてしたことがないもの。だから、雨降って地固まるなんてしらない。喧嘩したことないから仲直りの仕方を知らない。一度、関係が壊れると、究極の選択しかない。
迷子になっても、頼るのはグーグル。ネットの情報。
そんな希薄な関係の反面、
密着親子。絶縁親子。閉じた関係性。
「ここはどこですか?…私はどこに行けばいいんですか?」
自分が迷子になった時の心細さを思い出した。
頭が真っ白になったまま歩き続けたら、見知らぬところにいた。
道一本入っただけのはずなのに、元に戻れない。
誰もいない。表示もない。
人生にも道はない。中学・高校・大学・就職。反発しながらも、敷かれたレールを走ってきた。このまま行くはずなのに、人生には、ちょっとしたエアスポットが用意されている。思わぬ躓き。思わぬ方向転換。
頼るのは自分?ネット?見知らぬ他人?招待知れぬ親切な人?頼れる知人がどれほどいるのだろうか?
孤独と不安に耐え、自分で解決できるのは、自立した大人としては素晴らしいけれど…。
そんな中で出会った真白。…。
初めて、”自分”を必要としてくれる存在…。それぞれの思惑…。
そして…。
初見はネタバレしないで見ていただきたいけれど、
結末を知って再見すると、微妙なセリフ・表情他に、涙が出そうになる。
シーンは、どっきりカメラや、胡散臭いやらせの中に、七海が、設定も知らされずにオンエアされているような、ドキュメンタリーっぽく、展開する。
「ありえねー!」と叫びたく様なシーンの連続。
なのに、ふざけたバラエティのように見る気をなくすんではなく、なぜか見入ってしまう、魔訶不思議さ。
(ただ、監督や出演者のファンじゃないと、飽きるシーンもある)
実態があるようで、ないようで、あるようで。
そんな中で、われらは生きていると思い出させてくれる。
だから、手ごたえが欲しくなって、「やりがい」とか「自分探し」とか「ありのままで」「自分らしさ」とかが流行るのかな。
生きている実感をつかみたくなって。