「今回だけはネタバレなので、本文を隠します。ごめんなさい。」SCOOP! お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
今回だけはネタバレなので、本文を隠します。ごめんなさい。
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戦場カメラマン、ロバート・キャパの代表作「崩れ落ちる兵士」という、あまりにも有名な写真があります。
第二次世界大戦の前哨戦とも言うべきスペイン内戦で、反ファシズム側の兵士が被弾した瞬間の写真だ、と長く信じられてきた(プロバガンダに使われてきた)写真です。
ごく近年の検証で、訓練中に後ろに転んだ兵士の写真に過ぎないことが明らかになりました。
兵士は、死んでもいませんでした。
言葉は悪いが反ファシズムを鼓舞してきたのは、出所不明の写真と、それに添えられた「キャプションの威力」だったのです。
福山扮する主人公がカメラマンを志望したのは、中学の時にこの写真(と、それに添えられたキャプション)に接したことがキッカケでした。
写真週刊誌というジャンルが世に出た時、この媒体の成功の鍵が、写真に添えられる文章にこそあるという認識は、媒体に関わる全員の共通認識でした。
当時の人たちは誰一人、キャパの写真の真相を知らなかったはずですが、写真が力を発揮するのは、両者まったく同じ構造だったからです。
写真に上手に文章を添えれば部数が伸びる。そして主人公に一生の仕事としてカメラマンを選択させたりもするわけです。
その主人公が射殺され、まるでキャパの作品のオマージュのように死の瞬間を撮影された写真こそが写真誌を爆発的な大成功に導くというエンディング。
何重にも入り組んだ皮肉と、その中でも生き抜こうとする人間の、「きれいではないけれど本音で美しい姿」に、ホロリとさせられる、すばらしい作品だったと感じました。
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