「素晴らしかった」SCOOP! 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしかった
福山雅治さんの演技が最初とても変で戸惑ったがだんだんいいと感じるようになった。リリー・フランキーさんはずっとエロ本の文章で親しんで来たので、ライターが演技をしている印象がぬぐえずにいたのだが、この映画のクライマックスのシャブ中のキチガイをとんでもない演技力と存在感で演じていらして、すごい役者だったことに今更ながら気づいた。みんなそれをとっくに気づいていたのかと思うと恥ずかしい。
ただ、その場面で福山さんがフィルムのカメラを使って撮影した場面がピンボケで使えないと言われるのが非常に納得がいかなかった。大切な友達が命の炎を燃え上がらせているのにそれを真面目に撮影しなかったというのが納得いかなかった。そこは大切なカメラで命がけで撮影してこそカメラで生きて来た男の本懐であろうと思った。なので、あそこはすっかりフルオート撮影のデジカメで腕が鈍っていたというのなら、むしろ悲しさも感じられたはずなのだと、一緒に見に行った妻に話したら「あそこでは真面目に撮影しているように見えなかった」と言われた。そう言われてみると確かに、リリーさんをなだめてばかりいるようで撮影に気合が入っている感じがしなかった。勝手にオレがそういう場面が見たいと思って目が濁っており、冷静になってみると妻の方が正しいようであった。
あの場面では、警官隊をバックにかっこよく拳銃を構えているチャラ源を命がけで撮影するところがみたかった。チャラ源があれだけ魂や命のほとばしらせていたのだから、それに応えて友情やモラルやリテラシーを溝に捨ててカメラマンとして一世一代の写真を撮って欲しかった。そして頭を撃ち抜かれて命を落としたとしても、とんでもない写真が撮れたことで満足して死んで欲しい。
パパラッチのドタバタ映画かと思ったら中年男の友情と悲哀の映画で素晴らしかった。