「上下左右奥行きまでが狂う体験」ドクター・ストレンジ 神社エールさんの映画レビュー(感想・評価)
上下左右奥行きまでが狂う体験
MCUは今までの作品はほぼ観賞済(ジェシカ・ジョーンズ、デア・デビル、ルーク・ケイジ以外)。原作未読。
ドクターストレンジの存在はほぼほぼ知らなかったけれど、カンバーバッチ主演でヴィラン役がマッツ・ミケルセンと聞けば公開週に見ない理由が無い!と思い観賞。
MCU前作のシビルウォーはアベンジャーズ内部分裂の危機を描いていて、ユーモラスな部分が少なかった(タイトル的にしょうがないし不満には感じなかったけれど)のに対して、今回はシリアスとユーモアのバランスが良く、二時間あるようには思えない程体感時間的に短く、もっと見たくなるほどに楽しめた。
序盤のエンシェントワンに会う場面で、「ここは物質世界なのにそんなスピリチュアルな話が信用出来るか」みたいなセリフは今までのMCU作品のみをマーベル作品として見てきた人々を表している様にも感じられた。
MCU作品では今まで破壊で決着を着けてきたけれど、ドクターストレンジの選んだ答えは人々を治す"医者"であり、物質世界に相反する魔法を扱っているからこそ得られる"修復"で決着を着けたのは新鮮で、アベンジャーズがより結束する為にもこの作品が作られたには必然的だったんだなあと納得した。
今回のヴィラン、カエシリウスはマッツ・ミケルセンさんが演じている時点で嫌いになれないキャラだったんだけど、(手段は間違っているとしても)奥さんに先立たれ、希望を世界をよくする為と信じて行動しているのを見ると同情出来る部分もあるし、この作品で最後ってのは凄く勿体なく感じる。
感想でチラホラ『「インセプション」で見た概視感を覚える映像技術で新鮮味が無かった』とあったけれど、インセプションは夢の不条理さを具現化した作品であり、現実を書き換えていくドクターストレンジとは似て非なるものだし、インセプションから進んだ物理法則に囚われない世界の中での逃走や戦いは自分までその世界に入ったような物理法則の理を忘れそうになる様な映像で、何よりこの世界観がアベンジャーズにも後々加わるんだと思うと、今後にも期待感が募る。
個人的にはマーベルの世界観がパラレルでも大丈夫な、"マルチバース"の概念が出てきたのには興奮したなあ…。