「身を委ねて、常識を捨てよ」ドクター・ストレンジ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
身を委ねて、常識を捨てよ
ちょっと大風呂敷を広げすぎてしまった、マーベル・シネマティック・ユニバースの14作目。今度は魔術師である。"アイアンマン"や"キャプテン・アメリカ"の1作目がそうであったように、たまらなく興奮する。
これは新世代VR型の映画だ。まずもって3Dで観ていない時点でこの作品の魅力の50%を捨ててしまっている。3Dで100%、4D系で観れば120%になる。過去に観た4D作品(30本くらい)の中で、映像とのシンクロ体験は間違いなくNo.1である。
映画を、"演劇要素(脚本・演出・演技)"と"映像・音響要素(撮影・音楽・編集・上映)"の2つの構成要素でみた場合、本作は、映像体験要素に重心をおいて作られた総合エンターテイメント作品である。
かといってVFXだけでなく、視覚効果をバックアップする設定において、古典魔術や呪術、宗教儀礼をベースに考証を重ね、小道具、セットにいたるまで抜かりなく作り込んでいる。
さらには人気、実力ともにトップクラスのベネディクト・カンバーバッチを主演にして、話題性のみならず、作品の完成度を高めているのは、さすがディズニーだ。
「インセプション」(2010)に似たVFXがあるという指摘は、むしろ同作がリスペクトされたと喜ぶべきだし、すべての映画が過去作の影響を受けていることと大差ない。
劇中に、"身を委ねて心を解き放て、常識を捨てよ"というセリフがあるが、それはまるで従来の観賞スタイルに言っているようでもある。前世代的な視点ではこの作品の真価は計れない。
ありがちな演劇スケールで測るから、"あの映画に似ている"、"オチがありがち"、"話が浅い"などの映画評になるだけのことで、カラダで感じろ!とアドレスしたい。
マーベルファンには常識の"スタン・リーのカメオ出演"は、今回は分かりやすく、バスに乗っている(笑)。また、いつものダブルおまけは、次の「マイティ・ソー/ラグナロク」(2017年11月3日公開)への伏線と、「ドクター・ストレンジ続編(タイトル未定)」へのヒントを残して終わる。
"ドクター・ストレンジはまた帰ってくる"。
(2017/1/27/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ/字幕:林完治)