「キッチンから罵声が聞こえてくる料理なんて食べたくない」二ツ星の料理人 うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
キッチンから罵声が聞こえてくる料理なんて食べたくない
ブラッドリー・クーパー大忙し。なのでしょうね。
彼に合わせて撮影のスケジュールも間に合わせた感じで、頭から最後まで出ずっぱり。彼のファンなら納得できる映画かもしれません。私も、好きな俳優の一人ですが、映画そのものは特にこれといって観るべきもののない平凡なストーリーです。
料理指導に付きっきりで、腕を磨き、それなりに見せるテクニックを習得したとか、1ヶ月間うまいものを食いまくったとか、ワインと、チーズの味にはこだわりがあるとか、、、せいぜいその程度の話題作りに終わった感じが見えてきますね。
個人的な見解として、怒鳴りながら作った料理に美味いものなんてあるはずがないと信じています。私もかつてキッチンにいたことがありますが、えてして統率の取れた組織ほど完璧を目指し、新人の教育にわけの分らない根性論を持ち出すのです。「やる気がないのなら帰れ」とか、「こんなまずい味付けをした食材にあやまれ」とか、日常のように繰り返されましたが、そんなチームに居たって学ぶことは出来ません。
大体、めかし込んで出かけたレストランの、キッチンから罵声や皿の割れる音が聞こえたら、料理を楽しむ以前の問題ですよね。客の食べ方に注文を付ける店主も大嫌い。そんなんなら料理してもらわなくて結構。
なので、この映画、どれだけ料理界をリアルにとらえていたとしても、私には受け入れることが出来ません。「お話」としては、最低限の展開が用意されていますが、若すぎる成功ののちに挫折してドラッグ、酒に溺れ、借金にまみれたシェフが立ち直って、周りにも認められ、本当の大切なものに気づくという、「よくある」お話。クーパーの個人的な人脈で、豪華なキャスティングも実現したのでしょう。それ以外に、見るべきもののない作品です。
で、彼の映画の中での変化に気づく人は、よほどのファンか、よほどのアンチなのでしょうが、髪の長さや、体つき、傷の治り具合がカットごとにずれているのが編集でもごまかせないレベルにつながらなかったようです。
