「自分や周りを見つめ直して、新たなレシピ」二ツ星の料理人 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
自分や周りを見つめ直して、新たなレシピ
才や腕は確かなのに、性格が災いしてどん底に。自分や周囲を見つめ直して再起を図る。
映画なんかでもお馴染み。所謂天才肌故の。
どの分野にも必ずいるだろうが、料理人は多そう。
天才シェフのこだわり。求め過ぎて周囲と衝突。孤高。
それでも最高の料理を作り続ける。
アダムもかつてパリでミシュラン二ツ星のレストランを出していた天才シェフ。
が、酒・クスリ・女・借金と何かとトラブルを起こし、表舞台から姿を消す。
三ツ星の夢を諦めた訳ではなく、ロンドンでレストランを経営する友人トニーを訪ね、三ツ星を目指そうとするが…。
天才は2タイプ。変わり者か、高慢か。
アダムは後者。
厨房入りも半ば強引。かつての同僚や優秀なスタッフを集める。例えるなら、“七人の侍”。
厨房では勿論独裁者。はい、シェフ!
よくこういう光景見るね。
納得いかない料理にはダメ出しどころか、皿ごと壁に投げ捨てる。
失敗は? スタッフを容赦なく詰問。ほとんどパワハラ。
無能なスタッフに、俺が悪かった…と言うが、嫌味にしか聞こえない。
こんなんで三ツ星どころか、最高の料理や人間関係も上手くいく訳ない。
パリ時代の悪行が祟って借金取りに追われる。遂には暴行まで…。
名誉さえ掴めばこっちのもん。チャンスがやって来る。
ミシュラン評価の調査員はある時突然客として抜き打ちで現れる。噂は広まっており、何人組とかオーダー順とかフォークを床に置いてスタッフの反応を試すとか。
それに該当するような客が。厨房に緊張が走る。
アダムも暴行で怪我していたが、腕を奮う。
が、料理が返されてしまう。信頼していたスタッフの仕返し。
客はミシュランではなかったが、アダムは再びどん底へ…。
自分の悪行が返ってくる。それは自業自得だが、この天才肌で高慢だった男にも救いが。
子持ちの副シェフ、エレーヌとの交流。ロマンスも…。
何だかんだ言うが、トニーは見捨てない。
ライバルシェフとわだかまりが解け…。
アダムに新たなレシピが加わる。
さすがに巧いブラッドリー・クーパー。最初は鼻持ちならなかった天才シェフに、徐々に人間味を加味。
周りも豪華。オマール・シー、いい奴だと思ったら…。シエナ・ミラーやダニエル・ブリュールが美味だった。
ご都合主義で予定調和でもある。
ラストも和気あいあいとハッピーエンドだが、ちと味気なかったかも…。
三ツ星の最高級ではなかったが、程よい味わい。万人に受けるであろう“料理”であった。