「何度でも戻ってくる」スティーブ・ジョブズ 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
何度でも戻ってくる
セスローゲン演じるウォズが、何度も戻って来る所が良かった。あんなに激しくやり合ったら二度と会わないのが普通。それなのに各時代ごとやって来ては罵り合う。それがウォズの魅力でもあり、そうさせてしまうのがジョブズの魅力なんだなあと思った。
疑似父スカリーとの「お前がオレを捨てんだ」「いやお前のほうこそ」という罵り合いのあと訪れる凪のような関係。父性の克服。そのあとの娘とのやりとり。父親になりたくなかった男の変化。
この映画、伝記がどうのというよりも人間ドラマとして面白かったなあと思う。個人的には大好きな映画だった。
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劇場で見てた時、一つ残念なことがあった。
通路を挟んで隣に座っていたお若いカップルが、早口のセリフの応酬に飽きてしまったのか、二人してスマホを見始めた。しばらくして後ろの席の人に注意されて出て行った。
上映中スマホを見るのは勿論ダメだけど、彼らの関心のなさも何となくわかる。決して難しい映画じゃないけど、なんか敷居高い感じがする。構成の妙や、映画として凝っている所(16mm・35mm・デジタルの使い分けなど)も、興味ない人には「だからなんなの?」という感じなのかもしれない。
「PCをオタク以外でも使えるようにしたい」そんなポピュラリティを持ったジョブスの映画だからこそ、関心ない人にもリーチできる大衆性がもっとあっても良かったのかなと(それだとカッチャー版になっちゃうかもだけど)。今さら言ってもしょうがないけど、最初監督に予定されていたフィンチャーだったら独創性とポピュラリティを両立できたのかなあとも思った。