「【”サウルが、苛烈な強制収容所の中で、命懸けでラビを探した訳” 過酷な状況下でも、尊崇な志を貫いた男を描いた作品。】」サウルの息子 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”サウルが、苛烈な強制収容所の中で、命懸けでラビを探した訳” 過酷な状況下でも、尊崇な志を貫いた男を描いた作品。】
ー ナチスが強制収容所で行った、ユダヤ系民族の血を根絶やしにしようとした行いが冒頭から描かれる。
長廻しで、サウルの背景で行われていることには、敢えてフォーカスせずに・・。ー
□ナチスが、強制収容所で、効率よく”部品を処理”するために行った事。
ー それは、収容されたユダヤ系民族の人々の中にヒエラルキーを作った事である。ー
・カポ
ヴィクトール・E・フランクルの『夜と霧』でも言及されているが、カポは”ナチスよりも、収容された人々を、厳しく痛めつけた。”とある。
今作のカポ長のビーダーマンのように。
・ゾンダーコマンダー(=秘密の運搬人)
”処理された部品”を、ガス室から運び出し、焼却し、灰を処理し、ガス室を清掃する。
・腕のある職人たち
医者や、家具職人、鍛冶屋など、多数であるが、彼らも又、ナチスの便利屋である。
ー この、同民族内で、効率よく”部品を処理”するシステムを考えた連中は、それ故に、戦後もユダヤ民族から地の果てまで追われ、処刑されたのである。
◆感想
・サウルが、いつものように”処理された部品”を、ガス室から運び出している時に、虫の息の少年を見つける。”解剖しろ”という命令に、ユダヤ系医師に掛け合い、解剖を止めさせ、少年のために必死で、ラビを探す姿。
ー 直ぐに分かるが、息子(だとサウルは思い込んでいる・・)を、火葬させないために、キチンと天国に行かせるために、サウルはラビを命懸けで探すのである。
どのような状況下でも、人間の尊厳を失わないサウルの姿。
尊厳ある死を少年に与えるために奔走する姿・・。ー
<小屋に現れた少年を見た時の、サウルの表情。
驚き、そして徐々に微笑みを浮かべていく。
森の奥に走り去った少年は、きっとサウルが命懸けで、尊厳ある死を与えようとした少年の魂が具現化した形で現れたのだと、私は思った。>