「観る前の覚悟は結果取り越し苦労」映画 聲の形 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
観る前の覚悟は結果取り越し苦労
ハンディキャップ×イジメのかなりネガティヴなイメージ先行になってしまったのは、そもそも原作の掲載の経緯が色々ニュースになり、その方面の団体からも確認を取り付ける努力を行ったかなりハードな背景があったから。作品そのものよりも取り巻く環境が影響を移してしまうことは、制作側としても意図しているものではないのだろうが、話題性という面も興業的には必要悪なのだろう。
こんな箸にも棒にも引っかからない妄想を抱きながら、原作漫画を読まずに鑑賞。原作読むと心が弱くなる可能性を加味して。
一応、アニメなので実写のような生々しさは薄れてはいる。演出方法や編集方法、カメラワークやカット割り等々、アニメ-ションならではの観せ方を駆使しているので、そこは救われる。イジメのシーンや、自死しようとするシーンなども情報量の多さを放出することで、あまり深く考えさせないようにしているフォローがあるように思われ、以外とサラーっと追っていける。登場人物達の突拍子の無さも、演出方法としては良く出来ているのではないか。要はストーリーに余計なバックボーンを空想させないで、シンプルに思春期ストーリーとして読み取って欲しいという意図だ。現実ではありえる内容も、アニメ的手法によってオブラートに包めることで、非現実感を拡げ、観客の心をダウナーにさせない配慮が感じられた。
色々あったけど雨降って地固まるエンディングは、それでも心が荒ぶかもしれない観客に救いの手を差し伸べるフォローとして安堵させられる。罪と罰、贖罪、その先に待っている世界。アニメならではの本音ぶつけ合い直接的やりとりのデフォルメされたお伽噺故の救助で、身構えをしていた自分も衣を一枚一枚脱いでいく心地を得られる。今流行りの『セカイ系』とは対極な作品であり、非常に意義のある内容で満足をした。
良かったのか悪かったのか、『君の名は』と比較されてしまうのは、残念なのだが・・・ 俎上に乗せたくても一緒にするな、混ぜるな危険(苦笑)