「生身の恋する十代演ずる小松菜奈の喜怒哀楽の表情、魅力を見せつけて、輝かせるための映画」溺れるナイフ Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
生身の恋する十代演ずる小松菜奈の喜怒哀楽の表情、魅力を見せつけて、輝かせるための映画
小松菜奈の魅力を見せつけて輝かせるための映画に思えた。
山戸結希監督(1989年生まれの女性監督)による2016年公開の日本映画(配給はギャガ)。原作はジョージ朝倉による同名漫画、脚本は井戸紀州(64ロクヨン等)、製作が与田巽ら。
主演が小松菜奈、菅田将暉。他、重岡大毅、上白石萌音、志摩遼平、嶺豪一。
原作漫画は読んでおらず、あくまで映画のみ見ての印象。
多分、原作では菅田は美しく凛々しい存在なのだろうが、映画の中の菅田はあまり魅力的には思えなかった。まあその分、小松の持つ神様的イメージとのギャップに苦しむ姿はリアリティはあったが、造形もあり唯のチンピラ野郎の苦しみに思えてしまった。
一方、小松菜奈は、そもそもこの主人公のイメージそのままというか、中学生から別格の美しさで芸能活動し、レイプ未遂事件でのスキャンダル、高校出て即そのスキャンダル逆手に取った様な役での映画出演で、隠された第二のスキャンダル的事件にも同ぜず、最優秀主演女優賞をゲットする映画スターの前段階、生身の恋する十代を見事に演じていた。
彼女、天真爛漫な明るさの中学時代と哀しさ漂わし地味に生きる高校時代のギャップ。そして何といっても菅田と絡むシーンで見せる喜怒哀楽の表情が実に魅力的で、日本を代表する大女優となっていく資質を十分に見せつけられた思い。
また、小松菜奈が高校時代に付き合ってた重岡大毅のキャラクター設定と彼の演技は、望んでも彼の予想通り友人止まりになってしまう悲しい良い奴感が満載で、思わず応援したくなった。
ただこの映画、あわやレイプされる寸前で、犯人のナイフによる自殺まで見てるのに夢と思うというのはリアリティに欠く、加えて長々と続く菅田の火祭り踊りも退屈で、事件との時間的関係性も不明確で、脚本と演出には課題が有りとは思えた。