「声は甘いが人生はほろ苦い」ブルーに生まれついて kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
声は甘いが人生はほろ苦い
なんともほろ苦い物語。しっとり染み入る良作、という雰囲気の映画でした。
主人公チェット・ベイカーはあまりにも甘ったれなのですが、その生き方を見るとなんだかかわいそうに思えてしまう。ひとりで立つことが絶対にできないほど心がひ弱で、情けねーと感じるよりも痛々しさが先行しました。
天才が故に、甘ったれのままでそれなりに生きれたのかな、とも思えたので、天賦の才も場合によっては考えモノかもしれませんねぇ。
そんなダメ人間・ベイカーさんの演奏ですが、歌がとても良かったです。なんとも弱く哀しくて、切ない気持ちになりました。ヴォーカルアルバムを聴きたくなる。
一番印象に残っているのは、ベイカーさんが故郷に帰った時の、両親の反応でした。
息子を溺愛して、どことなく所有しようとしている母親と、息子を無視するような父親。いや、ホントつらいわベイカーさん。寄る辺ないよなぁ、そりゃタフに生きれないよなぁという思いが溢れました。ベイカーさんから伝わってくるかわいそう感の源泉はこの辺りにあるのかも。
ヒロインがちょいとご都合主義っぽく思えて、個人的には残念でした。
あと、帝王マイルス・デイヴィスのさすがの存在感!音楽家というよりも革命家みたい。甘ったれ男・ベイカーさんがdisられてもしまうのも致し方ないですかね。
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