劇場公開日 2015年12月19日

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ひつじ村の兄弟 : 映画評論・批評

2015年12月15日更新

2015年12月19日より新宿武蔵野館ほかにてロードショー

辺境の村、モフモフ羊、不仲の老兄弟。素朴さとユーモアと皮肉が絶妙の配合

2015年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で、アイスランドの新鋭グリームル・ハゥコーナルソン監督の長編第2作がグランプリを受賞し、世界を驚かせた。それが本作、「ひつじ村の兄弟」だ。

日本で比較的知られたアイスランド映画といえば、永瀬正敏主演の「コールド・フィーバー」や、昨年公開された「馬々と人間たち」あたりだろうか。これらの作品と併せて観ると、美しく雄大だが厳しさも感じさせる景観、ゆったりとした時間感覚、人間と動物の距離の近さ、ドライでシニカルなユーモアといった共通項が浮かび上がる。

本作の舞台となる村も、周りを山々に囲まれ、村人の多くが羊を飼育して生計を立てている辺境の地。主人公の老兄弟、グミー(シグルヅル・シグルヨンソン)とキディー(テオドル・ユーリウソン)もまた互いに隣接した土地で羊を飼っているが、仲が悪く40年も口をきいていない。2人ともアイスランド伝統のロピーセーターを着て、ヒゲぼうぼう、髪ボサボサの風貌が味わい深く、いい年したジジイたちの子供じみた仲たがいぶりも笑いを誘う。

村で飼われているのはアイスランディック・シープといい、純血家畜用羊としては世界最古の品種だそう。縮れ麺のような長めの毛に覆われたモフモフ感と、トボけた表情で細い脚をチョコチョコ動かして懸命に走る姿が、尋常じゃなくキュートだ。ともに一人暮らしの老兄弟が、家族同然、いやそれ以上に愛情を注ぐのもうなずける。

ところが、キディーの羊が伝染病にかかり、保健所が村の羊すべての殺処分を決めたことで、物語は大きく舵を切る。キディーがグミーを逆恨みして一層険悪になるが、先祖代々受け継いできた優良種を絶やしたくないという共通の思いは、やがて2人を再び結びつけ、大胆な行動へと駆り立てていくのだ。

まだ30代のハゥコーナルソン監督は、スパイスを効かせた羊肉料理のように、素材の魅力を引き出す巧みな味付けで楽しませてくれる。解釈の余地を残すラストを目撃した私たちは、あの老兄弟と羊たちはその後どうなっただろうかと時折思い出しては、本作の余韻をしみじみ反芻することになるはずだ。

高森郁哉

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