劇場公開日 2016年10月29日

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「正統派の続編。特に音楽が素晴らしい。」デスノート Light up the NEW world アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0正統派の続編。特に音楽が素晴らしい。

2016年10月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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デスノートのコミックが実写映画化されたのは 2006 年であるので,丁度 10 年前である。元々死神が持っていたノートが人間界に落ちて来たもので,自分の顔を知った者によって自分の本名をそのノートに書かれると死んでしまうというものである。極めて単純なルールであるが,付加的な条件もあって,死因が書かれてなければ心臓麻痺で 40 秒後に死ぬが,死因や日時等を細かく指定することも可能であり,死ぬ直前の最後の行動なども指定が可能であり,一度書かれたものはノートを破いたり燃やしたりしても取り消すことが不可能で,二度以上書かれた場合は先に書かれたもののみが有効で,ノートのページを切り取った紙に書いても有効で,ノートに触れた者にはノートに憑いた死神の姿が見え,ノートの所有権を放棄すればそれを使っていた間の記憶が消失するが,再度ノートに触れれば失われた記憶が蘇るなど,実に良くできていた。また,自分の余命の半分を代償にして死神と契約すると,全ての人物の本名と余命が見えるようになる「死神の目」を手に入れることができるといった設定もあって,それらのルールが物語を見事に構成していた。

最初の映画化では,主人公が夜神月(やがみ・らいと)という青年で,拾ったデスノートで犯罪者を大量に粛正したために神のように崇められたが,その正体を突き止めて逮捕しようとする警察や,その協力者として活動する探偵のLなどとの駆け引きが,あたかも将棋や囲碁の名人戦を見ているかのような緻密な頭脳戦として描かれ,非常に見応えのある作品となっていた。また,Lを主人公にしたスピンオフ作品も作られ,それもまた実に面白い作品となっていた。今作は,これまでの全ての実写化作品の流れを汲んでおり,ルール等も全て遵守されているほか,前作までに生き残った人物もそのまま登場するので,完全な続編である。本作で特に重要な人物は,夜神月の信奉者で,これまで二度も死神と目の契約を行った弥海砂(あまね・みさ)である。

10 年前にアイドルという設定だった弥海砂は,どんなに若かったとしても 15 歳は過ぎていたはずで,10 年経った時点では 25 歳以上になっていることになるが,二度も死神の目の契約をしたということは自分の余命の 3/4 を失っているので,本来 100 歳まで生きるはずだったとしてもギリギリの設定である。でもまあ,あり得ない話ではない。彼女の本作での振舞いもまた,見事な駒の一つになっていたことに衝撃を覚えた。

本作は,新たな原作なしに製作が行われたものであるらしいが,とにかく脚本が本当に見事であった。これまでの一連の作品を全て見ているのが前提であるが,10 年前にやり尽くした感のある話で,ここまで面白い話が作れるのかと目が点になった。夜神月やLとして前作までの人物がそのまま回想シーンに登場するのも素晴らしく,本流を継承する続編であることを物語っていた。本作で付け加わった新たなルールは,人間界に登場できるデスノートは6冊までで,7冊目以降は効力が発揮できないというものである。新たな死神が6体も登場するのかと期待したが,第1作から出ずっぱりのリュークを含めても3体しか出て来なかったのはやや肩すかしであったものの,その造形は実に見事なものであった。

これまでのルールを駆使した物語は非常に見応えがあって,観客にはサプライズの連続であり,すっかり騙されてしまうところなど,やられた感が半端なかった。強いて難点をいえば,6冊のノートという設定はあまり活かされておらず,3冊もあれば十分であったような気がした。また,夜神月やLの生物学的な遺伝子を継ぐ後継者という設定があるのだが,いつの間にそんな存在を作ったのかという唐突感があり,特に必要な設定でもなかったような気がした。更に,死神の目を持つ者を騙すことなどができるのかという疑問が非常に腑に落ちなかった。また,シリーズ上の主要な人物を不用意に殺してしまっていたのではないかという点が残念であった。

役者はいずれも好演していたが,一部にあまりに芝居がかったものを感じてしまったのが惜しまれた。また,戸田恵梨香の加齢が想像以上に痛々しかった。音楽担当のやまだ豊という名前は初耳であったが,実に素晴らしい曲を書く人であった。この映画の音楽は,昨日見た「インフェルノ」のハンス・ジマーを完全に凌駕していたと思う。これからの作品にも是非注目したい作曲家である。日本映画のエンドタイトルで歌謡曲が流れるのは,その曲を流すのを代償にして制作費を出資してもらっているためであるが,それにしても,今回の安室奈美恵の歌は映画の内容と全く無関係で邪魔なだけだった。監督は「アイ・アム・ア・ヒーロー」と同じ監督だそうで,手腕の確かさが感じられた。

この映画は,ネタバレすると著しく面白さを欠いてしまうと思われるので,あまり情報流出がないうちに鑑賞したのは大正解だったと思う。これから見ようと思う方は,極力ネタバレ情報に触れないように配慮することをお薦めしたい。
(映像5+脚本5+役者4+音楽5+演出5)×4= 96 点

アラ古希