リリーのすべてのレビュー・感想・評価
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魂の自由へ
私の聞き間違いでなければ、劇中で"the Danish girl"と呼ばれていたのは主人公の妻Gerdaでした。
不本意ながらも夫の繊細な美しさを見い出し、それを芸術へと昇華させ、伴侶を真の自由へ解き放った彼女。日に日に女性になっていく(元)夫との生活で、自身も女性として「男性」に寄り掛かりたい気持ちを抑えつつ、主人公を支え続けます。愛する「夫」を手放し「女性」として受け入れ、伴侶の魂を解放したのです。性別を超えた人間としての愛。同性愛などがタブーのこの時代でも、芸術家だからこそ出来たことなのかも知れません。
一方で自分の中に秘められた、長年見過ごされていた「Lili」を抑えきれない主人公。愛する妻の為に男性を演じ続けることが出来ないほど、女装をきっかけに性の不一致に目覚めてしまったのですが、もう少しGerdaの立場を思いやれないものかと、考えてしまいました。「夫」の時の方が気遣いがあって優しかったと言うか、女性になればなるほど、大胆に我が道を進むような印象でした。主人公が妻に与えることが出来たのは、絵画のテーマ、画家としての成功への切符でしょうか。
Gerdaこそ"THE Danish girl"だと思いました。
残念ながら、泣くほどの感情移入は出来ませんでしたが、迫力の演技からか、どっぷりと見応えがありました。
多様な価値観や人権が保証されない、悲しい日本の私
この映画で初めて、レッドメインとビカンダーという素晴らしい俳優に出会った。ビカンダー、その後、何本かの映画で見ましたが、この映画の彼女が一番いいかな。強くてたくましくて広くて温かくて大きい存在。そしてレッドメインの可憐さ。何て素敵なんだろう。いい妻に出会って自分のことが分かって、取り戻せて良かったね、と思った。
でも、受ける手術、基本、全部ドイツで。こういうところにドイツの徹底さと怖さを実は感じる。
そして:
もう本当にいい加減、如何に人間が、ロマンチック・ラブとか、「普通」という幻想とか装置を作って、「共同体」なり「国家」を無理やり保持してきたか、そのために信じられないほどの犠牲があったこと、それをなかったこと、見なかったことにしてきたことに気がついていい時代に私達は居るのではないか?と思う。もっと歴史から学ぶべきだ。権力者側だけからの「規範」歴史でなくて、私たち人間の歴史。人間は愚かだから愚行を繰り返すのだろうけれど、螺旋階段みたいに着実に良き存在になっていけばいいのに。
ずいぶん前に見た映画だけどやっと何か書いた(2020.10.09)
正直な二人の葛藤が切ない
真面目な話だろうになんでR−15なんだろう?と思っていました。なるほどと見て思いました。真摯だなぁと思いました。
妻の苦悩の話でもあり、アイナーが、リリーとして生き直す話でもありました。
自分を偽らないことの喜びと、そのことが周りを、この場合は妻を深く傷つける矛盾に苦しむ様子が切なく迫ってきました。
妻には申し訳ないですが、それでいいと思いました。致し方なったと思います。
偽らず自分のやりたいように生きてこそ、誰かを愛し、慈しむことができるとわたしは思っているので。
わたしはヘテロの女を自認しているので、ゲルダの気持ちはよくわかります。
でも、リリーの気持ちもわかるんです。
多分それは女だからだと思います。
女はこの世ではどちらかといえば虐げられる側なので、常にマイナーなので、別のマイナー達にも共感しやすいのだと思います。
個人差はありましょうが。
ベンウィショーも可愛かったです。
いいお話でした。
ワーキングタイトルの製作した映画ははハズレなし、という自分神話更新です。
エディレッドメインの演技に見とれてしまった。しかし、アインを支えた...
美しく伝える
自分でありながら、自分でない。 もう一人の自分。 映画の冒頭、それ...
美しく強く 静かで誠実な愛の姿
嵐の前ぶれかのような 静かに心拍数が上がる音楽とともに映し出される湖。終わりの始まりの場所である。
二人が「もう愛せない」と思うことができたら どれだけ楽だったのだろう。
目の前にいるのは夫なのに 彼はもういない。それを認めたゲルダの優しさと強さに心を締め付けられる。一方リリーはアイナーでいることの”努力”の放棄をゲルダに訴えた。しかし最後までリリーはゲルダを愛しており それはきっと彼女であり彼の”努力”だったんだと思うと どうしようもなく胸が張り裂けそうになった。
臨場感のある小さくて大きな音 ズラリと並ぶドレスやシューズなど美術セットも見応えあり。
他人事のようでも誰にでも当てはまるテーマだね!
この物語の舞台はデンマーク。時代は日本でいえば、昭和の初期頃の事。
今でこそ、LGBTに付いての理解もようやく一般的に認知されるようになってきた。
だが現在に於いても、全く偏見や差別が無いと言うわけではない性同一性障害者の暮らしに対する理解が、この時代ではどれ程困難極まりない現実であったのかは、想像に容易い。
そんな時代に生まれた育ったリリーが、葛藤を抱えながらも自己の魂の叫びに忠実に生きようと試みた勇者の物語であり、またリリーを支えて生涯彼を?否彼女を支え貫いた妻ゲルダの愛の軌跡の物語と言っても良い作品である。
もしも、今年のオスカー候補に5回目ノミネートのレオ様が選ばれていなかったら、絶対にエディに主演賞を受賞して欲しかったと映画を観ながら考えていた。何故ならこの時代には精神病患者として診断を下す医師も多数いたと言う性同一性障害者を演じるのだから、とても繊細でデリケートなキャラクターの内面を観客に理解出来るように芝居をするのは骨の折れる事であり、また根気のいる作業だったと思う。そう言う意味ではエディは、完全に自分の中に存在する2人の人挌の中で揺れ動く葛藤を見事に魅せてくれた。
男性画家で有るのは常にイメージで作り上げた虚構の自分と、裏に隠されたリリーこそ彼の、否彼女の本質だったわけだが、その葛藤が切なく、観客の胸に伝わって来る芝居だったと思う。
しかし、映画全体余り感情を露わにして取り乱すような演出は目立たずに、寧ろリリーとゲルダの表情の変化だけで、彼らの苦しみを見せてゆく。とてもデリケートな問題だからこそ、あくまでも繊細に丁寧に描き出す監督の演出の方法も良かったからこれだけ多くの賞に選ばれたのだろう。
それにしても、妻の描く絵画のモデル代役を務める事で、幼少の頃から一人内に秘め、隠し通して来たもう一人の秘密の自分自身に火が点き後戻り出来なくなる現実が有るとは、私には思い付きもしない考え方だった。
衣装の手触り肌さわりに魅了されて、過去の自己への回帰が始まると言うのは、人間の5感が如何に人々の根幹に深く根ざしたもので有るのかが理解出来た。その役を本当に巧く演じていたと思う。性同一障害が医学的には、多重人格とは何処がどう違うのか私には医学的な根拠や理屈はサッパリ理解不能であったけれども、そんな疑問が沸くと言う事だけでも、LGBTの方々の苦労や苦悩の一端を垣間見る事が出来大変有意義な時間でありました。
人はいつの時代も、他者に何と思われようとも、自己実現に向けて一人ひた向きに生き、そんな自己を貫く姿勢を観る事は、今後の自己に残された人生を如何に有意義な事柄で埋め尽くし、そして余生を充実させた時間として生きる事が可能なのか?を自己に問い掛ける良い起爆剤となる。そう言う意味に於いても本作が世に生まれた事は大変意義はある。
そして本作のラストは特に、この主人公達の想いを巧く表現していた見事な演出だった!
有りのままの自分を生きると言う事が如何に困難を伴う生き方であろうとも、只一度の人生を如何に生きる事が大切かを問う骨太な作品だった!
リリーの生き方とは、みんなが有る意味自己実現に挑戦する事が出来る素晴らしい生き様を教えてくれている作品だとも思う。
出来る事なら、敬遠せずにこの作品を多くの方が観てくれるならば、こんな喜ばしい事はない!
KYと他者に揶揄されようとも共に自己実現を益々日々楽しんで行えたならば、これ程幸せな事はあり得ないだろう!
それにしても、エディ激痩せ過ぎですよね!女性でもここまで痩せている人ってそう多くはいないと思う!大変な役作りにハマっているけれど、エディの次回作ももっと期待したいな!!
60点
SFチック
実話だけど、リリーにしろ、妻にしろ、あまりに数奇な運命で、まるでSFのようだと思った。
夫がだんだん異生物になっていくのを戸惑いながらも献身的に支える妻、その過程でお互いに苦しみながら、本当の自分とは何なのか、本当の自分の気持ちとは何なのか、模索していく、というか。
キャロルと連続で上映されてるところ、もしかしたらLGBT運動の盛り上がりがきてるのかな?(もちろん前からだけど、最近特に)
近いうち、オカマを馬鹿にしたテレビ番組が前時代的で不謹慎だと言われる世の中になるんだろう。
性転換手術がとても危険なものだということは、概要を聞いただけでもわかる。それを世界ではじめてやった人がどこかにはいるんだろうと思ってはいたけど、こういう感じだったのね、って思った。
ストーリーとしては、リリーが主人公というより、妻が主人公の話という感じ。「あなたが妻の立場ならどうしますか?」と突きつけられているよう。
リリーにとって、自分の本来の性を取り戻すことは、他の全て、文字通り命さえも犠牲にしてでも、成し遂げたいことだった。それを受け入れることができますか?という。
性器の形成になぜそこまでこだわるのか、正直よく分からないと思ったが、仮に自分に生まれつき性器がなかったら…と想像したら、確かに手術してでもそれが欲しい、と切望するかも、と思った。
追記
実際のリリーの手術は映画とはだいぶ違ったよう。
手術は全部で5回やっていて、最後の手術の3ヶ月後に死亡している。ゲルダが看取ったということもない。
卵巣と子宮の移植を試みていて、卵巣は拒絶反応で除去、子宮も拒絶反応を起こし、それが原因で死亡している。
子供を産める身体になると、リリーも医者も本気で思っていたということか。
放射線治療のシーンでも思ったけど、ほんのすこし前の時代の医学ってのはこんなに遅れてたんだね、って思った。
ゲルダの実際の絵
www.all-art.org/art_20th_century/wegener1.html
uk.arken.dk/exhibition/gerda_wegener/
レズビアンの絵がメインだったみたい(?)
これを見ると、ゲルダとリリーの関係って実際はどうだったのか? 随分印象が変わる…。
誰でも起こりうる?
リリーのすべて
妻側目線の物語
ヒリヒリする様な感覚がスクリーンを支配しいつの間にか物語の面白さに...
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