「ラスト30分で、しらけた。」レヴェナント 蘇えりし者 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
ラスト30分で、しらけた。
復讐劇である。
復讐劇といえば、
アレクサンドル・デュマの「モンテクリスト伯」である。
高校生の時にやめられない止まらない状態で
主人公の感じる悔しさと憤りと悲しみに同調して歯がみしながら
徹夜で読み耽った覚えがある。
でも、グラス(レオナルド・ディカプリオ)の復讐劇には
それほど感情移入ができなかった。
おそらくそれは、
彼の息子を殺したフィッツジェラルド(トム・ハーディー)にも
いちおうの理屈があったため、
単なる憎しみの対象にはならなかったからではないか
という気がする。
なんたって19世紀前半、
成立したばかりの米国と米国人がネイティブ・アメリカンの祖国を蹂躙し、
フランスもまた領土の一部を狙い、
さらにはネイティブ・アメリカンの部族どうしが敵対しあるいはそれぞれに荷担し、
右を向いても左を向いても敵ばかり、という超戦争状態。
その場にいた人間は皆、
自分が生きるためには
どんな理屈だってつけたであろうことは想像に難くない。
その中で、
息子を殺されたグラスの執念はもちろん分かるんだけれど、
殺した側のフィッツジェラルドが完全な悪かといえば、
状況的にそういう説得力はない。
そこが、
復讐劇としては弱いところ。
しかも
2時間半を超える上映時間のうち、
グラスがグリズリーによって死の淵に至ってから
奇跡的なサバイバルを経て甦るまでの話が大半を占め、
もちろんその克明な描写は凄い迫力なんだけれど、
いかんせん長い。
おまけに、
*** ここからは結末付近のネタバレ ***
ラスト30分、
グラスが砦にたどり着いて
逃走したフィッツジェラルドを追うとき、
なぜ隊長と2人きり??
ありえねーーー
どうぞ襲ってくださいって言ってるようなもんじゃん。
ここで、しらけた。
帰ろうかと思った。
それでもその後、もしかして予想外の出来事があるかも
と思って我慢して観てたけど、
予想外のことは何もなかった。
数日前から悩まされてた頭痛が
悪化した。