劇場公開日 2016年4月22日

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「自然と対峙して見える人間の生」レヴェナント 蘇えりし者 HammondJ3さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5自然と対峙して見える人間の生

2016年4月23日
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鑑賞方法:映画館

本作は、厳かな大自然におけるちっぽけな人間の命の奪い合いを描いた作品です。もう一人の主人公は間違いなく、大自然そのものと言えるでしょう。
この魅力は、スクリーンでないと存分には味わえないでしょう。自然光のみで撮りあげた映像にも関わらず、CGよりも美しい画を描いた功績だけでも賞賛に値します。

自然の中で当たり前のように繰り広げられる摂理。
喰う者喰われる者、生かす者生かされる者、奪う者奪われる者、与える者与えられる者。混沌としているようで実際には、それが自然における生命の循環を作り、誠に神の仕業と思わせてしまうほどの、美しさを生み出します。

その中で人間だけが、復讐と略奪という業を延々と行い、人類の歴史にも地球の生態系にも、あまりに深い傷を作りその美しさを破壊してきました。
今作は、その舞台を未開のアメリカ大陸におき、自然が形作る言葉では表せない神話性と、人間の愚かさや醜さを対比して描くことにより、作品が持つメッセージを伝えることに成功していると思います。

同時に、ディカプリオ扮するヒュー・グラスを通して、一人の人間が本来の在るべき「生」に目覚めていく姿を描いており、まさに人間賛歌となっているとも思えます。ディカプリオの台詞に頼らない熱演がなければ、最後にグラスが示した選択に説得力は生まれなかったでしょう。自然と対峙し続け、純然たる生の実感を得たからこそ、彼は内なる「神」に出会い、あの選択が示せたのだと思います。

詩的で荘厳な世界に置いてきぼりにされるような気分になる、この作品に賛否は分かれるところもあるかもしれませんが、こんな感覚味わえる映画もそうそうありません。ぜひなるべく大きいスクリーンの劇場で観てみてください。
坂本龍一のスコアも聴きどころですよ。

HammondJ3