「ディカプリオ 受賞し者」レヴェナント 蘇えりし者 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ディカプリオ 受賞し者
祝!レオナルド・ディカプリオ、アカデミー主演男優賞!
初ノミネート「ギルバート・グレイブ」から実に22年越しの悲願。
「タイタニック」では一人だけノミネートされず、オスカーに嫌われてるなんてマスコミに勝手に言いふらされたけど、以後も3度ノミネートされ、本当はオスカーに好かれている事は映画好きなら誰もが知っている。
受賞出来る実力は充分。ただ、チャンスが無かっただけ。
そして今回、最大のチャンスが回ってきたのだ!
19世紀、裏切りで息子を殺され、山奥に置き去りにされた男のサバイバルと復讐。
レオの演技は圧巻の一言。
ハードだったと語る極寒の地での撮影。
地面を這いつくばり、泥だらけになり、傷だらけになり、生肉生魚を食らい、川を流され、崖から落ち…。
内に宿したメラメラと燃え上がる復讐の炎。
苦しみ、悲しみ、憎しみ、凄まじい生命力、精神力、そして息子への深い愛を、全身全霊を込めて体現。
これほどの体当たり熱演を見せられたら、ぐうの音も出ない。
別に一番好きなハリウッドスターはレオという訳でもないが、いつ頃からか逞しく男臭くなった今のレオは「タイタニック」の頃よりずっと好きだ。
作品はかなりのヘビー級。生々しいシーンも多く、好き嫌いは分かれそう。
身の毛もよだつクマの襲撃シーン。自分が襲われているような、クマに襲われるとはこんなにも恐ろしいのかとゾッと体感させられる。
身体中を裂かれ、瀕死の重傷。
そんな身動き出来ない状態で、卑屈な男により目の前で息子は殺された。
全てを失った。
見棄てられた。
男は、一度死んだ。
…が、男は死を抗った。
死の淵から蘇った。
何も無い僻地をさまよう。憎しみだけを追い求めて。
極限の状況下で、それは強靭なものになっていく。野獣のように。
トム・ハーディ演じる仇に人の醜悪が集約されているが、彼に立ち向かえなかった若き男も、見棄てる事を決断し彼らに最期を見届けるよう命じた隊長も同罪。
この憎しみ。
この悲しみ。
目的を遂げられたとしても、男に救済はあるのか。
坂本龍一の音楽が作品を荘厳に包み込む。
3年連続の快挙となったエマニュエル・ルベツキの撮影。
大自然の圧倒的な美しさ、厳しさを余す所無く捉え、映像詩と呼ぶに相応しい。
2年連続の監督賞となったアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。
テレンス・マリックを彷彿させる今回の演出はもはや巨匠の風格で、スリリングかつ重厚に160分近い長尺を一気に見せ切った。「バードマン」より気に入った。
(ここから急に砕けますが…)
でも、監督賞はジョージ・ミラーに獲って欲しかったんだよねぇ…。
それか、去年はリチャード・リンクレイターに…って、今更愚痴っても仕方ないんだけど。