劇場公開日 2016年8月6日

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ルドルフとイッパイアッテナ : インタビュー

2016年8月5日更新
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井上真央、20代最後の夏に思うこと

女優の井上真央が、名作児童文学を3DCGアニメーション化した「ルドルフとイッパイアッテナ」に声優として出演し、約2年ぶりに銀幕復帰を果たしている。NHK大河ドラマ「花燃ゆ」で“座長”を務めあげた井上も、来年1月の誕生日で30歳。一回りも二回りも成長して迎えた20代最後の夏、胸に秘めた思いを映画.comに語った。(取材・文/編集部、写真/根田拓也)

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本サイトで井上をインタビューするのも、「それいけ!アンパンマン りんごぼうやとみんなの願い」以来2年ぶりとなる。井上は2014年8月5日、山口・萩で「花燃ゆ」の撮影に入り、翌15年10月14日のオールアップまで激動といえる1年間を走破した。

いかなる現場でも溌剌と振舞って来た井上。大河の現場でも変わることはなかったが、日本中が注目する番組だけに葛藤や悩みが尽きることはなかったようだ。「本当にいろんな事がありました。落ち込んだり、凹んだりすることもありました。ただ、現場へ行くとそういった気持ちを出さないようにしていた自分もいたとは思うのですが、やっぱり皆さんがスイッチを入れてくださる……というところがあったので、現場に救われました」。

大河を終え、初めての映画作品で得た役どころが、黒猫のルドルフ。1987年に刊行され、シリーズ累計発行部数100万部を突破したロングセラー児童文学が原作だ。映画では、長距離トラックの荷台に迷い込んで大都会・東京に来てしまった黒猫ルドルフが、街を牛耳るボス猫・イッパイアッテナに出会い、ノラ猫としてともに生き、成長していく姿を描いている。

ボストンテリアのハグちゃんを溺愛する姿がメディアでも度々紹介されるなど、愛犬家として知られる井上だが、かつては猫を飼っていたことがあったという。「本当は今でも飼いたいくらいですが、家族が猫アレルギーを持っていることが発覚して……。本当は今でも飼いたいくらい。なので、犬派、猫派というのはないんです」。

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声優初挑戦となった「アンパンマン」ではりんごぼうやに息吹を注ぎ込んだが、「初めてで『どうしよう』と思うくらい反省すべき点が多々あったのですが、勉強になることも多かった」という。今回は、「性格や年齢設定など細かいところから作り上げてやらなければならなかったし、声を安定させる事の難しさもありました」と述懐。さらに、「猫の鳴き声を出したかと思えば、いきなり(擬人化して)人の声を出さないといけないという切り替えは大変で、『これで大丈夫なのかな?』と思ったりもしました。それと、鳴き声の使い分けは、人に気づいてもらうための鳴き声や、甘えるパターンなど色々あって、すごく難しかったですね」と明かす。

イッパイアッテナ役で声優初挑戦となった俳優の鈴木亮平とは、CMでの共演こそあったものの映画という舞台で対峙するのは、小栗旬の初監督作「シュアリー・サムデイ」以来約6年ぶり。井上に負けず劣らず、鈴木もNHK連続テレビ小説「花子とアン」、映画「HK 変態仮面」シリーズ、「俺物語!!」など、疾風怒濤の勢いでキャリアを積み重ねてきた。井上は、兄妹役を演じた「シュアリー・サムデイ」撮影時のことを「あの作品では、私の撮影は1日で終わったんですよ。あの時の亮平くんがすごく好きで、旬くんに『妹目線かもしれないけど、亮平くんが一番かっこよかった』と言ったのを覚えていますね」と思いを馳せる。

さらに、「『シュアリー』の頃と、『変態仮面』などでご活躍されてから会っても“変わらない”ということがすごいと思いました。CMの撮影でお会いしたときは『朝ドラが大変だった』とおっしゃっていましたけれど、大変なことを“大袈裟に”大変にしない人だと思います」と明かし、信頼を寄せていることがうかがえる。それでも、「役作りに関して相当にストイックな方。なのに『今回はどう準備をしていいかわからなかった』と言うことなので、『じゃあまずトラ柄の格好をするべきじゃない?』と進言してみました。でも1度もしてくれませんでした(笑)。私は黒猫ですから(アフレコの)3日間、ずっと真っ黒な服で行ったのになあ……」とツッコミを入れることは忘れない。

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井上こそ、多くの人が抱くパブリックイメージと驚くほど差異がない。それもこれも周囲の人たちのおかげと感謝の念をにじませる。誰からも「真央ちゃん」と呼ばれ親しまれてきた井上だが、いつしか「真央さん」の方がしっくりくるようになった。20代最後の夏を迎え、いま何を思うのか。

「20代でものすごく濃い時間を過ごすことが出来たと思います。多くのドラマや映画で主演させて頂きましたし、NHK紅白歌合戦の司会も経験させて頂きました。大河ドラマでいろんな方に支えてもらったように、今度は私が誰かを支えられるような役者になっていきたい。そう思えるようになったのは、色んなことを20代で経験させて頂いたからだと感じていて、純粋に、もっともっと自分自身に力をつけていきたいなという思いもあります」。

そしてまた、これまでもそうだったように、映画作品への出演に貪欲な姿勢をのぞかせる。井上に、第35回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をもたらした「八日目の蝉」のメガホンをとったのは、成島出監督だった。

「今後も縁のある方と出会い、役と出合い、自然な形でやっていけたらいいなと思います。縁を大事にしていきたいですね。そして成島監督には、また鍛えて頂きたいです。最初は『もう嫌だ!』と思うこともありましたが、もう一度、いまの私がどういう風に見抜かれているのか。そういう環境に自分の身を置くことって必要ですよね。またご一緒させて頂けるように頑張ります!」。

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