ペット : 映画評論・批評
2016年8月9日更新
2016年8月11日よりTOHOシネマズ日本橋ほかにてロードショー
面白ペット動画のような楽しさに、現代社会を反映した要素も。動物好きなら見逃せない
動物たちの冒険や騒動を描くアニメ映画は数多い。だがその大半は、動物を擬人化した人間不在の世界観だったり、野生動物たちが中心だったりで、身近なはずのペットが主役のアニメは意外に少ない。いわば盲点だったカテゴリーに、「ミニオンズ」で知られる新興スタジオのイルミネーション・エンターテインメントが切り込んできた。
飼い主が留守のとき、ペットは何をしている? そんな疑問から企画が始まったという本作。実際に序盤では、飼い主らが出かけた途端、ペットたちが三々五々集まって会話を始めたり、家具や家電でアトラクションよろしく遊びまくったりと、秘密の生活を謳歌する様子が描かれる。
キャラの造形は若干デフォルメされているが、体毛の質感、身のこなしや仕草がCGでリアルに描画され、動物好きにはたまらない。彼らのやんちゃぶりは面白ペット動画のように楽しく、テンポ良い編集と軽快なBGMで一層盛り上がる。
物語は、マンハッタンのアパートで暮らすケイティに長年飼われているテリア犬のマックスと、新顔の毛深い大型犬デュークを中心に進む。2匹は当初互いに反目しているが、ある日散歩中のハプニングで迷子になり、一緒に家を目指すことになる。
マックスに想いを寄せるメスのポメラニアンが2匹を探すチームを指揮したり、歩行器装着の老犬が捜索チームを案内したりと、昨今のダイバーシティ的な目配せも。一方で、飼い主に捨てられ、地下空間で徒党を組んでいる傷心のペットたちは、格差社会を思わせる。
実は本作、ピクサーの「トイ・ストーリー」シリーズと、設定や話の筋で共通点が多い。世界初のフルCG長編アニメである第1作が1995年に公開されてから20年以上たち、そのプロットはもはやスタンダードになった――イルミネーションのスタッフ陣はそんな風に考え、リスペクトを込めて物語を構成したのかもしれない。
ミニオン好きへのおすすめは、空腹のマックスとデュークが訪れるソーセージ工場の場面。2匹の脳内麻薬が幻覚を見させているのか、擬人化されたソーセージたちが笑い、踊り、喜んで食べられる。多幸感の中にうっすら狂気も感じさせるシーンがジワジワくるのだ。
(高森郁哉)