劇場公開日 2015年11月21日

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「新たなる希望」さようなら(2015) R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5新たなる希望

2024年7月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

難しい

SFの部類になるのだろう。
この日本の地と状況のなかで、主人公が南アフリカ難民ターニャという設定だ。
難民として受け入れてくれる国が指定する人数が順次「順番」によって移民していく。
しかしそれは無作為ではなく工作されたもののようで、犯罪歴のあるものや何らかの要因によって後回しになる人々も多い。
ターニャがまだ幼い時に父がくれたAIアンドロイドレオナ。
恋人のサトシと友人の佐野がいる。みなまだ順番が回ってこない。
さて、
この作品もまた難解な部分が多い。
120年ごとに咲く竹の花をAIが最後に見たのは、その前のターニャとの会話でAIはターニャを学習しており、ターニャが興味あることや美しいと思うことをデータベース上に管理していることで、ターニャと同化したと考えることができる。
ターニャが死んでからレオナは一切動かなくなったが、ターニャの肉体が朽ち果て白骨化したころ、レオナは急に動き出すとターニャの頭蓋をなでる。
その時初めて同化現象のようなことがおきたのかもしれない。
ターニャは外に出掛ける。そして竹林を見つけ坂を下りようとするが、勢い余って転倒する。ほふく前進でたどり着いた場所に竹の花を見るのだ。
これはターニャの夢でありその夢をターニャのようになったレオナが実現させたのだろう。
これが意味するのは、SFとしてAIによる意識の獲得のようなものだろう。
しかしそうなるとタイトルの意味はかなり広範囲になる。
逆に、
ターニャを中心に考えると、皆日本から出ていく。徐々に目に見えるように人口が減少していく。
婚約したサトシは、ターニャがなぜ日本に来たのかという理由と、彼女が言った「白人も黒人も同じ」という言葉と「白人が黒人に4000人殺された」に反応する。
「帰る」突然の言葉
彼の反応の意味が全く不明だ。
しかしこれは伏線で、みんなターニャに「さようなら」をしているのかもしれない。
佐野は息子との再会と夫の冷たさといつまで待っても来ない順番に絶望して火の中に飛び込んだ。
ターニャにはもうレオナしかいない。
彼女を一人にしてしまうのがこの物語の目的なのだろう。
そして2か月
随分体調が悪くなったターニャ
外には焼却炉の中に木片をくべる男がいる。この描写だけは何ひとつ読み取れなかった。
その後二人の男が道で出会いハグして別れるのは、移民順番が来たのだとわかる。
近隣には家もないのになぜ焼却炉と男がいるのだろう???
ターニャが裸だったのは、朽ちる様子を映像化したかったからだろう。
しかしこの作品の映像には長い気だるさのようなものが付きまとっている。
冒頭のシーンも朽ち果てるシーンも盆踊りも…
それは流れる時間を表現しているのか?
ターニャがレオナを連れて外出するシーンがある。その際外の景色はすべてカーブミラーに映し出されたように歪んでいる。
それはおそらく汚染を表現しているのだろう。
しかしレオナが一人で山へ行くとき、もう歪みはない。
汚染が除去されたのだろうか?
さて、
ターニャはすべてにさようならをした。
レオナは物理的に朽ち果てる様子を見届ける。
ターニャは汚染された日本を表現しているのかもしれない。
みな彼女のもとを去った。
レオナは物理的な死を経験すると同時に、ターニャのすべての記憶がある矛盾と葛藤したのかもしれない。
失ってしまったと思っていたターニャの記憶と思いとがある。
120年に一度咲くという竹の花を見たのは、希望であり、日本は死んでなかったということなのかもしれない。
この作品は絶望から希望を見出す物語だと思った。

R41