「その物件、取り扱い注意」残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
その物件、取り扱い注意
世界を震え上がらせたJホラーも「貞子3D」の辺りからおかしくなり、今年は「貞子vs伽椰子」なんていう気が狂ったとしか言い様がない企画まで登場し、もはや堕落と衰退の一途…。
あの頃のような正統派のJホラーが見たい…。
これこれ!こんなのを待ってました!
正確にはホラーとミステリーの中間的な位置付けのジャンルだけど、久々の正統派Jホラーと言って差し支えナシ!
ゾクゾク楽しませて貰いました。
事の始まりは、怪談話を集める作家“私”の元に届いた、女子大生“久保さん(仮名)”からの手紙。
“久保さん”が引っ越してきたマンションの部屋で、着物を擦るような音が…。
もう序盤のここだけで、「貞子3D」とか視覚のこけおどし恐怖演出に偏った昨今のJホラーより充分怖い。
やっぱりホラーというのは、目に見えない想像させる怖さ。
夜中寝てると微かな音でも気になって…というのは誰にも身に覚えある筈。
かく言う自分も、夜中台所の蛇口のポタッポタッという水の音だけでも気になって寝れない事も。(←ただの神経質)
何故か奇怪な出来事はこの部屋以外でも…。
同マンションの別室で、女の子が見た“ぶらんこ”。
前住人が引っ越したアパートで、真夜中大家さんを訪れた“梶川くん”。
調査を始めた“私”と“久保さん”は、このマンションの土地の歴史を調べると…
ヤバい話が“湧いて出る”。
着物の擦る音の正体と思われる“高野家”の夫人の自殺。
その自殺の原因となった“湧いて出る赤ん坊”。
さらにその原因となった、赤ん坊殺し。
さらにさらにその原因となった、座敷牢。
ここまで来ると、冒頭の一怪談エピソードと思われた“河童のミイラ”と繋がり、見事な伏線と言うより、劇中で言う所の“根っこは同じ”。
平成~昭和~大正~明治…時代を遡れば遡るほど原因となった事件は何重にも陰湿に。
そして、全ての元凶は福岡・北九州。
辿り着いた、“聞いても話しても呪われる”最凶の怪談…。
ああ、もう、埒があかん!
原作は、“読んではいけない小説”とまで言われた小野不由美のホラー小説。
お馴染みの“原作未読”だが、当代きっての職人監督・中村義洋がまたしても手堅い演出を披露。
聞けばこの人、無名時代に「ほんとにあった!呪いのビデオ」に携わっており、今回久々のホラー回帰。
じわじわ煽るJホラー十八番の恐怖演出、ホラー映画を演出していると言うより怪談話を覗き見聞きしてしまったような見せ方が巧い。
竹内結子と橋本愛の役名がそれぞれ“私”や“久保さん(仮名)”とか曖昧なのも実体験風怪談話っぽくてユニーク。
エンディングのその後のシーンで一瞬映る“何か”(誕生パーティーの“ぶらんこ”の女の子の背後に…)、エンドロールの“あの絵”…。
幕切れは唐突で消化不良気味との声もあるが、この後味悪く残った終わり方は嫌いじゃない。
だって、それが呪いや恐怖じゃないだろうか。
“残穢”とは…
(要約すると)死や惨劇の呪いが、残り憑いた穢れ。
今、アナタが住んでいる土地にも、ひょっとしたら何かしらいわくつきの出来事が…?
おっと、知らぬが仏。
もし、本当にヤバい話が出てきたら、とてもとても平穏に住めやしない…。