劇場公開日 2016年1月30日

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「防ぎようのない恐怖が蔓延する世の中は怖い」残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)

3.0防ぎようのない恐怖が蔓延する世の中は怖い

2016年2月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

関連ムーヴィ『鬼談百景』を観てから観ました。
怖い映画は好きなのですが、うーむ、今回はいまひとつ。
怖いのは怖いのですが、なんだか文脈が乱れているというか・・・

作家である私(竹内結子)のもとに届いた女子大生(橋本愛)からの手紙。
読者からの届く実話(?)をもとに、現代の百物語を連載している私の心に、ちょっと響いた。
いわゆる団地の怪談なのだけれど、セオリーとは異なって横並び・縦並びでもない。
通常だと、その部屋に「謂れ」があることがほとんどだけれど、その「部屋」に謂れはない。
女子大生が過去を探っていくと、その土地に数々の謂れがあった・・・というハナシ。

へへへ、面白いねぇ。
怪談ってのは、まぁ、そんなものだ。

ある種の「限定された空間・時間」の中に、非日常=恐怖というものを押し込めて、日常を安楽に暮らそうというもの。
その土地土地に根付いた怪談は、あって無べなるかな。
この映画では、その「非日常」要素が、何年何世代にもわたって残っている、というのが面白い。

主人公である私の夫が、新築住宅の地鎮祭の際に私にいう言葉が興味深い。
「土地には、何人も何世代も住んできたのだから、血なまぐさい土地なんてない」

そう、つまり、時間的に「非日常」は、あるとき忘れてしまうということ。
まぁ、それがあるから、人間って生きていけるんだけれど。

ということで、この映画の「縛り」は空間的なものかと思って観ていたら、ありゃ、件の「住んではいけない部屋」の根源を探っていくと、遠く離れた土地に根源があったという。

ありゃりゃりゃ、こりゃダメだ。
作り手が勝手に、自分で拵えた埒を破ってしまっている。

うーむ。
まぁ、時間も空間も超えて「非日常」の穢れが連綿としていく・・・というのは怖いのかもしれないが、そういうのはどうもインフルエンザとかのウィルス感染を思い出して、かえって怖くない。

防ぎようがないから怖いのかもしれないが、この映画では、そういうようになっていない。
私に加担するかのように、興味本位で首を突っ込む佐々木蔵之介の作家は、最後に憑りつかれない・・・

これってミステリー的にはちょっと合点がいかないなぁ。
まぁ、そもそもホラーなので、ミステリー的納得を求めてはいけないのかもしれないが、それだったらミステリーのような語りは止めてほしい。

しかし、たぶん、こういう「防ぎようのない恐怖」というのが現代におけるいちばんの恐怖なのだろう。
ああ、なんだか、むかしの怪談が懐かしくも、羨ましいよ。

りゃんひさ