ドローン・オブ・ウォーのレビュー・感想・評価
全48件中、41~48件目を表示
現代戦争の暗部
アメリカのUAV(いわゆるドローン)攻撃の実態を表した作品。実際の出来事をベースに作られています。
飛んでいる航空機が撃墜されても自分の命に関わることはないし、コントロールルームはエアコンが効いて快適、そして何より、毎日の任務完了後は自宅に帰り家族と過ごすことが出来ると良い事尽くめの様に思えるUAV操縦士ですが、実は、PTSDと言うか、精神的にダウンしてしまう兵士が多いと言われています。この作品を見るとよくわかりますね。任務の時は、自分の命がかかっているわけではないですが、やっぱりそれでも人の死と関わっているので緊張する一方、家に帰れば子供や、家族の雑事にとらわれ、そのギャップが大きすぎです。一部は、それに順応する者も居ますが、それはこのことの重大性をきちんと認識していないか、あるいは、共感性に欠ける人物であるように思えました。
いやぁしかし、軍のオペレーションである内はまだしも、国際キリスト教協会・・・って言うかCIAのミッションは酷いですね。一部にCIAの作戦方針に積極的に賛成の人間も居るようですが、あんな作戦方針をみると、普通は拒否的反応で、軍という性格上断れないという前提において消極的に賛成・・・と言うか、命令だから実施すると言うのが、普通の人間の反応ではないかと思います。それがますます、UAV操縦士の心の負担を増している要因になっているのは間違いないと思いました。
テロとの戦いとは何か、いま世界が危険に満ち溢れているのは、果たして誰の責任なのかを改めて考えさせられました。
無人攻撃機は有人戦闘機を超えるか?
この映画は元米空軍兵ブランドン・ブライアントの経験をもとに実話を元に制作されている様だけども、どこまでリアルなのかはこちらもわからないけど…。
もう一つの主人公だと思われるMQ-9リーパーが一瞬しか出てこないのは何故なのだろうか? と。
物語では主人公である元F-16ライダーが、MQ-9リーパーに任務を変更された様だけどこの映画はミニタリーに疎い人ほど、未来の戦争は全て無人攻撃機になるのではないか? と誤解する恐れが多少あるように感じる。
そうだったら日本の空自も導入するF-35AライトニングIIが、本国米国でもUSAFが大量生産・配備する訳が無いだろうし。
何かF-16から降ろされたパイロットが何故F-35Aに機種変しないのかも? 疑問に思った。
今後、無人機は有人戦闘機に対するデータリンクとして支援任務になるだろうに…とは思うが。
※追記
メデイアからの情報で11/12頃、IS国のジハーディ・ジョンを無人機で殺害したとペンタゴンが発表したとニュースがあった。この映画のリアルさも感じる。
その後パリで銃撃テロ。
無人機になったから、犠牲になる兵士が減るとした事は何の意味もないのでは? と思った。
人を殺す覚悟
兵士であろうと民間人であろうと悪人であろうと善人であろうと戦争とは人を殺すこと。
自分には死ぬリスクがないシチュエーションでの戦争。
ただ人を殺すことはどういうことか。
派手な映画ではないけれど心理描写を飽きさせずしっかりみせてくれる良作。
これが現代の戦争。その驚愕の実態と、変わらぬ悲惨さ。
【賛否両論チェック】
賛:戦場に行かずして戦っている現代の戦争の実態に、心底驚かされる。そして、そんな戦争がもたらす悲惨さや虚しさを、改めて浮き彫りにする展開にも、深く考えさせられる。
否:どうしても単調な任務のシーンが続くので、戦争映画に興味がないと、退屈しそう。必要性に疑問を感じるラブシーンもあり。
自分の国で普段の生活をしながら、地球の裏側の戦争に加わっているという現代の戦争の実態に、まず驚かされます。カメラの映像だけで、全く爆音がしない爆撃の描写や、トーマスが悩めるスアレスに話す、
「機が撃墜されても、俺は無傷。今1番危険なのは、帰りの高速道路での運転だ。」
というセリフなんかに、全てが表れていると思います。
同時に、どんなに形が変わっても、戦争が多数の無関係な人々の命を奪い、関わる者の心を蝕んでいく悲しいものであるという普遍的なテーマにも、しっかりと言及しているのが印象的です。
軽い気持ちで観られる内容ではありませんが、現代における戦争の悲惨さを改めて考えさせられる、そんな作品です。
間違いなく"問題作"
"ムカつく奥様"キャラが登場する非常に"B級"なメロドラマ・実にチープな"THEアメリカ的"な雰囲気は、間違いなく本作品の”肝"です。
つまり、戦争映画に必ずある「俺にも家族いるから護らなくては」という"戦争正当化定理"を崩壊させる温度差が、本作のベースなのです。
ドローンは、誰がどこから操作しているのか公にならないため、相手国からの"個別攻撃"を喰らうことは無く、その意味で兵士の「生命」は保障されています。にもかかわらず、相手国民の「生命」は簡単に奪えてしまうという戦略システムは、当事者国双方に実害が及ぶかつての戦争を否定し、片方にのみ命を落とす"ゲーム”への転換を賛美します。
要するに、「人を殺す責任」というものを兵士が体感しないままに、殺害行為が可能となったのです。
そして、薄っぺらい責任感のもと殺された相手国民の「生命」も、アメリカの主義からすればやはり薄っぺらいものに過ぎません。
この"薄っぺらさ"を、この映画では見事に体現しています。
繰り返しになりますが、昼間にやっているような浮気とかヒステリーとか、「ここはアメリカだぜ!イェーイ!ベガスサイコー!」とか、最後は将校と部下の禁断の恋…!(?)という感じのB級ドラマを、飽くまで意図的に展開させることで、いかに現代の戦争が異質なものかを観客に訴えているのではないでしょうか。
少なくとも、本作がアメリカ発の映画であることは大きな意義を持つと思われます。
ただ、悪く言えば「退屈な映画」です(完全クリアを目指して行う作業ゲームのような感覚)。しかし、これが意図的な"コード"だとしたら。策士です。
民間人を殺すことは"犯罪"ではないとされるのに、主人公が上官の命令に違反し、敢えて操作不良を装い攻撃不能とし、民間人を巻き込まなかった"正義"は"犯罪"であるというのは、本当にナンセンスで皮肉。
攻撃側に犠牲の無い戦争を正当化するために「法を守らないような奴らに守る法はない」という定理を、我々は批判さえ出来ません。
本作が投げ掛けた「生命」の問題は、こちらが戦争を止めたところで相手は止めやしないという(一方的な)理由によって、結局は「殺し方の倫理観」の問題に落ち着いてしまうのでしょうか。
また、法律学で良くある、解釈の問題。先制的自衛の「解釈基準」が如何に恣意的なものか考えさせられることは必須です。
ラスト主人公が「神」となるシーンで、如何に本作が”問題作”かを知ることになるでしょう。
全48件中、41~48件目を表示