「過度の期待を持ちすぎた…」この世界の片隅に 神様の願いごとさんの映画レビュー(感想・評価)
過度の期待を持ちすぎた…
レビューが高評価ばかりなのと、「キネ旬邦画部門1位」というのを聞いて、今更ながら観てきました。平成生まれの私にとって、戦争はリアリティを全く感じていませんでしたが、夜間であっても警報が鳴り、老若男女が防空壕に身を隠す等、当時の様子を具体的に知ることができ、それを乗り越えた当時の男女の精神力の凄みを感じました。ですが、この物語は、私にとってそれ以上でも以下でもありませんでした。主人公に共感できず、感動することも出来ませんでした。一番最後に主人公が夫に発する言葉、「ありがとう。この世界の片隅に、ウチを見つけてくれて。」が、取って付けたような言葉に聞こえました。伏線があってのその表現なら分かるのですが、なぜその言葉を選んだのかという根拠が私には分かりませんでした。
戦争のリアリティなぞ誰もわかりません。分かるのは生活のリアリティ。生活にリアルを感じていなければ、この映画は楽しめないと思います。生活とは、生きるとはを知ることですね。
リアリティに欠ける特殊な中年おじさんの理想の主人公ですから、共感できなくて当然。おじさん世代の人間ですが、神様の願いごとさんの感想には大いに共感できました。
取って付けたように聞こえる件は、私も同じでした。
でも上のコメントにもあるように、伏線が無いわけでもないこと、この映画はストーリーで明示されていないたくさんの含意が描き込まれていることは感じますね。
オープニングに流れる「悲しくてやりきれない」の歌詞を振り返ってみてください。
雲が流れている空を見上げながらこの広い世界にすごく距離感を抱いていて、その下にポツンといる自分の小ささとか孤独さという心境を歌っていましたね。
唐突に感じたというその言葉も、直前の場面では誰かを亡くした人達が現実を受け止められずにずっと誰かを探し回っていて、何度もすずさんが誰かと見間違えられてしまいます。
彼等の悲しさとかむなしさが痛いほど伝わってきて、世界の途方もない広さを思い知りその場にしゃがみこんでしまったという風に自分は解釈しました。
周作さんがこんなにも小さい自分を見つけてくれたことがどれだけ奇跡的なことかを感じずには居られなかったのでしょうね。