「老若男女(特に男)観るべき」この世界の片隅に E.HOBA_666さんの映画レビュー(感想・評価)
老若男女(特に男)観るべき
まずこの映画の最大の美点。
戦時モノにありがちな、左か右に偏るということがなく、なおかつ、お涙ちょうだいに走る作り方になっていないこと。
日々の生活を淡々と、しかし緻密に描くことで、普通の日々のありがたさ、幸せというのを認識できる。
そして、女性の強さと、男の薄っぺらさがよくわかる。(自分は男です)
男のあり方について考えさせられる。
ちょうど、良かれと思ってしていたことが、いつの間にか自分のエゴになり、彼女にフラれたばかりなので、この映画を観てなぜそうなったか腑に落ちた。
男は自分の思う幸せを押し付けて、それで幸せにしてあげているつもりになり、さらにはすぐに調子に乗って自我を通してしまいがちだと思う。
これは同級生の水兵くんが訪ねてくるシーンに顕著。
あとは、絵が徹底的にリアルで美しい。人の動きから、広島弁、さまざまなモノ、乗り物や兵器に至るまで。
これは、たかだか数十年前実際にあったことなのだということを認識できる。(登場人物はフィクションだが)
アニメの爆撃や機銃掃射シーンで鳥肌が立つのは初めての経験だった。下手なCGや実写より数段リアル。
自分がその方面に詳しいぶん、作り込みの凄さが際立って見えた。
これは戦争の恐ろしさと、日常に起こり得るという事実を効果的に伝えている。
1番伝えたいことは戦争はあかんということだと思うが、かなり心に訴えるものがある。
右翼も左翼もこれを観て、素直な気持ちをぶつけあったらどうだろうか。
今の日本人はこのどちらかに偏っている人が多い気がする。これはよくない。
戦争はあかん。それはわかる。でもそれだけを言っていて平和になるなら世話はない。
だから自衛隊や軍はいらんという話にもならない。
世界の皆が戦争はあかんとわかるまでは、自衛のために軍を持つことは必要なのではないだろうか。
それは、すずさん達のような女性を作らないために、つまり抑止のために。この「抑止のため」を忘れた時、人は暴走する。
だから、自国を衛るためだけに軍を扱う強い意志が必要。
そしてこの意思を持つには、戦争は起こり得るし、起こればどうなるということを理解せねばならない。
人は失わないと理解しないというが、失ってからでは遅い。
自分は仕事柄、これをよくわかっているつもりだが、理解していない人がこれを理解するのには最適かと。
とにかく、日本人なら観るべきである。
難しい話が嫌いな人でも、見る価値はある。絵や登場人物が美しい(失われがちな日本の美しさ)。