「アニメ耐性がついたおっさんが出会った幸せ。被ばく2世のおっさんは本作をこう見た」この世界の片隅に しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
アニメ耐性がついたおっさんが出会った幸せ。被ばく2世のおっさんは本作をこう見た
「傷物語II」「君の名は。」「聲の形」と今年アニメ映画にチャレンジする、という目標を掲げ、最初のとてつもないハードルをなんとかクリア?し、ここまで来たおっさんにとって、本作を鑑賞することに「アニメ映画」というハードルを全く気にせずに鑑賞しようと思ったことは自然な流れ。
ましてや、広島市、呉市が舞台の映画。被ばく2世のオレにとって、「観なければいけない映画」である。
「この世界の片隅に」
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私的なことだが、主人公すずは、オレのおばあちゃんにあたる世代である。
祖母はまさしく「そのような生き方」をしてきたお人である。いきなり終盤の話をするが、広島で原爆を受け、孤児を受け入れ、孤児院を立てた立派なお人である。
だが、それ以上に、「かわいい」人だった。笑顔がくしゃっとなる。祖母と暮らした日々は中学生までだったが、「当時」の話は一切しなかった。今も資料館にその書記を残す祖母がなぜ「当時」の話をしなかったのか。
それはたぶん、「精一杯生きることに、周りがどうだろうと、やるべきことをする。子供たちにこれ以上悲しい思いをさせない」
本当に、ただそれだけだったのだと思う。
ただ日々を、その日を、その次の日を、その次の年を、「生きてきた」だけなのだろう。それは大変な日々だっただろう。だが、人は笑っていきていたい。
いや、「笑っていきなければいけない」。
祖母のように、すずのように、どんなに世界の片隅にいる人間でも、何があろうと、そうなのだ。
大事なものが奪われる。だが、今は生きている。ならば。
その「ならば。」をどう過ごしたか、この映画の登場人物のさまざまな「ならば。」を「さりげなく」描いていることに、オレはうれしく、悲しく、その「上手さ」に激しく感動しているのである。
この映画には、その日々がある。そしてそこからの、未来がある。
この映画は、戦時中、戦後と、主人公すずが日々を生きる姿を描くと同時に、彼女の中にある「相反する思い」が日々常に交錯し、それが「笑い」「怒り」「悲しみ」「諦観」を重ね、織り交ぜ、小さなエピソードをいくつも見せてくれる。
広島を故郷に、呉を田舎に持つオレにとっては、特に瀬戸内海の景色、小丘の松の木、その土の質感に涙する。
周作の、すずへの気配りと照れの所作に微笑み、性の生々しさを感じる。
哲くんの、すずの「普通の姿」をみて、カットごとに、「はははは」と笑う姿に爆笑し、そして涙する。
ラッキーストライクの空き箱の入った残飯に、怒りと笑いがこみ上げる。
一番ボロ泣きしたのは、ラストの橋の上で、バケモノのかごから出てきたアレ。最高に優しい新たなる出発である。
そして、孤児を連れて帰るすずに涙する。その子供は、うちの母とほぼほぼ同い年にあたる。オレはおばあちゃんのおかげで、ここにいるのだ。
追記
エンドロールも泣かせる。「受け継ぐ」、とはこういうことなのだ。
1975様
お世話になります。しんざんでございます。コメントありがとうございます。「この世界の片隅に」近場での上映、おめでとうございます。
レビュー楽しみにしていただいて恐縮です。私のレビュー作品の評価については、ご存じとは思いますが、雰囲気ですので、大目に見てやってください。5年間相変わらず進歩のない、くだらない語り口、内容ですが、今後もいつものどおりのしんざんで参ります。
「傷物語II」はブログのほうで修正、加筆しています。またブログのほうでは「しんざん」なりの年間ベスト・ワーストも近日やりますので、どうぞかまってやってください。
はじめまして。しんざんさんのレビューをかれこれ五年ほど密かに拝見し続け、この度の「この世界の片隅に」のレビューを見て、本来はこういった登録物は好まないので殆んどやらないのですが、何故だか居ても立っても居られず映画ドットコムに今しがた登録をしこの文章を書かせて頂いている次第です。私は被爆二世でもないですし、東の人間ですが、この映画がようやく拡大上映され近場で上映されるので、このあと直ぐに観に行きます。しかと、観に行きます。
突然のコメント、お許しください。個人的に好きだったマスター@だんだんさんがこちらでレビューすることを止められてしまいましたが、これからも、しんざんさんのレビューを拝見できること、楽しみにお待ちしています。時折、この映画は其なりの評価で、これは駄目なんだ、と思うレビューもありますが(^^)でも、しんざんさんのレビューを観たあとその映画を観ると、その通りだなあと思うことばかりです。他のレビュアーの方にはない独特な文章が大好きです。それでは、上映の時間が迫っていますので、急いで打っているもので纏まりのない文章、申し訳ありません。
蛇足、傷物語Ⅱ熱血篇の編集はされましたか?(⌒‐⌒)
因みに私のニックネーム、1975は生まれ年ではありません。もっと若輩者ものです。
失礼いたしました。それでは。