「ラストなぜかけるがかけるのかだけ疑問だが。」orange オレンジ Takehiroさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストなぜかけるがかけるのかだけ疑問だが。
『orange』(2015)
dTVにて。 土屋太鳳(たお)の朝ドラなど観ていなくて、演技をみるのは初めてだと思う。竹内結子に似た感じがする。山崎賢人は幾つか映画を観たが、今回は一瞬織田裕二のような面影があるような。原作は少女漫画との事。未来の自分から手紙が届き、10年前の自分が後悔しないようにとアドバイスが届く。そうしたSFファンタジーである。その後悔をしないために、主人公は数々の挑戦をしていく事になる。タイムマシンのSFのような、未来が変わってしまうのかという問題とどう対応されているのだろう。『ひよっこ』でいい人の警官を演じた竜星涼がいい友人を演じてもいる。なぜしないと後悔になるのかという謎ときにもなっている。恋愛には先取した人が優先するというルールがあるようでもあるが、それが誠実な背景に包まれているようで、この映画では女性の先輩に先に宣言されてしまい、主人公は引く。女性の先輩が悪役。映画の中で、物理の授業だか、「タイムパラドックス」という話があり、パラレルワールドという仮説の話を出す。少し、原田知世の『時をかける少女』を思い出した。タイトルがなぜオレンジなのかもふと思う。手紙のお願いを守れたり、守れなかったりする。女性の先輩たちが主人公に嫌がらせをするが、同級生が手助けしたりと、そういう面も描かれている。先輩たちの嫌がらせをクリアした後の、学校のプールサイドで二人で花火を見て、手を握り合っているシーンは、それ以上でもなく、情景的にも精神的にも美しいシーンだったろう。その後の祭りのシーンも美しい。随所に10年後の自分の願いがアドバイスとして出て来る。ここら辺は心理ドラマというか、もっと言っても良いこともあったかも知れないというような、高度な場面だと思う。その後核心に入っていくが、難しい話になり、どうなっていくのだろうか。
アドバイスのような10年後の自分からの手紙も終えてしまい、高校生の主人公がどうしていくのかが、主題になる。するとまた意外な展開である。これは良く作ってあると思った。二人から仲間も含めての展開になる。しかし、10年後のみんなのシーンも出てきて、これと過去が変わった場合の兼ね合いもどうなるのか。主人公の菜穂と翔の物語ではあるが、実は大きな役割の、友人須和の
物語でもあった。終わったと思っていたが、まだ10年後の自分からのお願いは続いていた。そして10年後の自分よりも高校生当時の、その時の判断が互角のようになる。タイムトラベル的にも
高度な設定だと思った。恋愛ものだけではなく、青春ものでもある。仲間が尊い。多くの現在の映画はキスシーンを高校生の話でもしてしまうが、この映画も頬にはしてしまうが、口と口よりは淡いのかも知れないが、現代の奔放さとの兼ね合いで負けてしまっているのか。難しい年ごろだ。成年も20歳から18歳に引き下げられるかも知れない所なのだが。ただ、どうしてあの後で会話しなかったのかというのは、運命を変えるのを知っているはずなのに、辻褄の合わないような気がした。
あそこで勇気を出さないとどうしようも無かっただろうに。だが、10年後の話のほうが先行するような逆転が起き、そこからまた調整されていくのかなという感じも受けた。その調整のために、少し変に感じる部分だったのかも知れない。まだ運命の変わる余地を残したのか。そして10年前に戻り、前回が最後の会話だったはずが、その時点を変えて菜穂が声をかけて翔を会話をした。救いが、
女性のほうから好きだと告白する所からだったのか。男性のほうは、翔にはかなり厳しい言い出せない過去の悔いがあった。高校生では早いと思われるかも知れないが、どこかで、大学生にしても、運命的な出会いをして、ずっと暮らしている人は多いのかも知れない。実際に高校生から運命の出会いをしていった人も多いだろう。むしろ、その初期の段階で失敗すると迷って飛んでしまい、おかしくなってしまう人が多いのかも知れない。ラストに近づくにつれ、タイムトラベルの世界観がちょっと難しいシーンが増えるようだが、いよいよ<当日>のようだ。この映画はドメスティックバイオレンスを夫から受け、シングルマザーとして翔を育てたが、精神を病んでしまった母親との
コンプレックスが翔に陰を落としてしまっている面からの視点もある。人は無数の分岐点で生きていくが、決定的な重要なポイントとしての分岐点がある。その分岐点のシーンとなる。友情の仲間との魂と、その中の一人は生涯の伴侶でもあったというような関係性はきっと実話でも多くあるに違いない。それが人生の幸福への道筋の一つの定型なのかも知れない。不信と奔放の現代の中で、ぎりぎりながら、友情と恋愛の尊さを思い起こさせようとする、映画関係者たちや原作の少女漫画にしても、どんな時代にも人間の生き方、考え方を律しようとする人は現れているのかも知れない。仲間の友情が仲間を救う。もしかしたらこの映画を観た後で運命が変えられる人が出来るのかも知れない。そういう意味で運命は変えられるのだろうか。そうは思える映画で良い作品を目指したと思えるが、辻褄は最後までなんだかわからなかった。このラストで良かったのか。ラストだけはわからなかった。とにかく辻褄はわからなくても、一瞬を誠実に思いやりを持って積み重ねていくメッセージはある作品だと思う。