劇場公開日 2016年1月8日

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「田舎の実家にある、カバーが豪華な辞書、大百科」ブリッジ・オブ・スパイ しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0田舎の実家にある、カバーが豪華な辞書、大百科

2016年1月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

スピルバーグには、撮らなければいけない映画があるのだという。

スティーブン・スピルバーグ

それにあたる作品で真っ先に思い当たるであろう、「シンドラーのリスト」「プライベートライアン」、そして忘れてはならない「ミュンヘン」。

この3作は、その意図をもって作られた、映画史上燦然と輝く傑作である。もちろん彼の傑作はそれだけではないが、この3作に共通して言えるのは、

「自分がどう見られるかは問題ではなく、世間と刺し違える覚悟でも、自分で撮らないといけないという意志で作られた作品」といえるのではないだろうか。

だが、後期の、彼のその「撮らなければいけない」意思で作ったと思われる作品群は、「ほかに作る人がおらず、でも撮るべき歴史の物語」という、

「作品として残すことが重要」

という目的にすり替わっているように思う。もっと簡単に言うと、

「現実問題、誰のためにもならない映画」

そりゃあ、スピルバーグにしか撮れませんって。

・・・

「ブリッジ・オブ・スパイ」

「田舎の実家にある、子供のころ、おばあちゃんに買ってもらったカバーが豪華な辞書」

極論すると、「置いてあること」に意味があるもの。

「教科書」とはまるで正反対だね。だって誰も開かないんだから。

スピルバーグがこうなっちゃてるのは、加齢よりも、使命感が簡単に果たせる、チャレンジの意味がすり替わる環境にあると思われる。

まあ、誰も文句は言えねえし、誰もこういう「お金にならない」映画をもう撮れないんだから、それ自体を目的になってしまうのも仕方がないのかもしれない。

そういう意味ではスピルバーグ、すごい!とはいえる。だが、結局そういう立場になっちゃたのかあ、と同時に寂しくもある。これを「円熟」とか「進化」とか言いたくはない。

映画自体のレビューとはちょっと違ってきているが、内容は全くそんな感じ。個人的には「ミュンヘン」のような、背中を刺されるような作品が恋しい。

追記

マーク・ライランス

ただの役得。今年はスライしかあり得ないね。

しんざん