ブリッジ・オブ・スパイ : 映画評論・批評

ブリッジ・オブ・スパイ

劇場公開日 2016年1月8日
2016年1月5日更新 2016年1月8日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー

スピルバーグが再現する、過去に置き忘れて来た前世紀の一コマ

ブルーグレーに統一された画面の裏側から、硬直した時代の冷気が客席にまで下りてくる。やがて、マンハッタンの片隅で市井の人を装い、黙々と諜報活動と思しき動きを繰り返す男の日常が詳らかにされる。男はソ連がアメリカに派遣したスパイ、ルドルフ・アベル。彼がいかに忠実な諜報員かは、鏡に映った自分の顔に度々目をやりながら、丹念に自画像を描く姿を見れば明らかだ。スパイは自らを客観視する観察眼が劣化してないかどうかを、日々、確認しなくてはいけないのだ。

画像1

東西冷戦真っ直中の1950~60年代にかけて、やがて逮捕されることになるアベルと、方や、アメリカ政府の指示により国選弁護人として彼を弁護することになるジェームズ・ドノヴァンの人物像に迫る実録ドラマは、対極の立場にある男2人を、深い部分で同化させて行く。どちらも、祖国から託されたミッションを遂行する過程で、その行いが自らの信念に反してないかを見定めることができる、自分自身に対して忠実な者同士。その立場を超えた結びつきは、大義名分もなく、国益という身勝手な理由付けの下、いがみ合いを続ける現実世界が過去に置き忘れて来たもの。かつて、「20世紀を映像で遺すことが監督としての使命」と言い放ったスティーヴン・スピルバーグが再現する、これもまた、失われた前世紀の一コマに他ならない。

アベルを演じるマーク・ライランスはすでにニューヨーク批評会協会賞の助演男優賞を獲得し、来る1月10日に発表される第73回ゴールデングローブ賞でも受賞が有力視されている。冒頭の自画像シーンから、飄々として切なげな表情で観客の心を鷲掴みにしてしまうライアンスの名演は、監督の演出より、むしろ、アイロニックな人間描写に長けたコーエン兄弟の脚本に負うところが大きいと思う。兄弟の手によって独特のユーモアとペーソスが描き込まれたことで、スピルバーグ的ドラマ構成にいつもとは少し異質な陰影が生まれているのだ。

清藤秀人

関連コンテンツ

特集

[S・スピルバーグ監督×T・ハンクス主演×コーエン兄弟脚本×感動の実話]この組み合わせだけで、もう見逃せない!スパイ交換の危険な交渉を託された、普通の男の奇跡と感動の物語
特集

監督・スティーブン・スピルバーグ、主演・トム・ハンクス、脚本・コーエン兄弟──アカデミー賞受賞スタッフ&キャストで描く、真実に基づく奇跡の物語「ブリッジ・オブ・スパイ」が、2016年1月8日に日本公開を迎える。冷戦時代、たったひとりで...特集

関連ニュース

関連ニュース

フォトギャラリー

DVD・ブルーレイ

映画レビュー

平均評価
3.8 3.8 (全301件)
  • さすがトムハンクス 面白がったです。 トムハンクス演じる敏腕弁護士ドノヴァンとソ連スパイアベルとの友情が素敵でした。 ラストもよかった。 パパカッコいー! って感じでした。 笑えるところもたくさんあって、とて... ...続きを読む

    ジジ ジジさん  2018年9月23日 23:43  評価:4.0
    このレビューに共感した/0人
  • これが実話なんて凄すぎる ネタバレ! ...続きを読む

    yupppiii yupppiiiさん  2018年8月22日 13:09  評価:2.0
    このレビューに共感した/0人
  • 面白かったです 面白かったです☆。感動もしましたし。 ...続きを読む

    hide1095 hide1095さん  2018年7月24日 00:37  評価:4.5
    このレビューに共感した/0人
  • すべての映画レビュー
  • 映画レビューを書く
このページの先頭へ

最近チェックした履歴

映画の検索履歴

他の映画を探す

映画館の検索履歴

他の映画館を探す

特別企画

新作映画評論

  • ザ・プレデター ザ・プレデター 男臭くて血しぶき飛び散る1980年代テイストを甦らせた“狂い咲き”の快作
  • かごの中の瞳 かごの中の瞳 人間関係の“深い闇”が描き込まれた、欲張りでチャレンジングな1作
  • 運命は踊る 運命は踊る 判りやすく迎合するばかりの安易な映画を退ける監督の覚悟に圧倒される
新作映画評論の一覧を見る
Jobnavi