「こんなヒーローものが観たかった」アントマン SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
こんなヒーローものが観たかった
小さくなって戦うという異色のヒーロー。アリを操る、縮小、巨大化を使い分ける、といった特徴的な戦い。
ヒーローものって、アベンジャーズは特にそうだと思うんだけど、ドラゴンボール的な強さと強さのぶつかり合いで、最終的に思いが強い方が勝つ、みたいな展開になりがち。
でもアントマンは、基本能力は弱いので、工夫で戦わなくてはいけない。その特殊能力の特徴を最大限に活かして。
これはジョジョのスタンドバトルに近い戦い方だと思う。
小さくなった世界そのものの映像も、面白い。こういう意味での現実にはあり得ない映像をSF映画は創るべきだと思う。単に光線をぶつけあって戦うとかじゃなくてね。
娘の子供部屋での戦いが特に面白かった。ミクロの世界で壮絶なのに、はたからみると単におもちゃがポンと投げられてるだけとか、視点が異なることによる世界の見え方のギャップが面白い。
アリやトーマスが大きくなったりも、子供の発想的な面白さがある。
家族ドラマも良かった。父親が犯罪者で、影で悪く言われていることを娘は知っている。でも、父親は悪い人間ではないと信じている健気さ。この娘がむちゃくちゃ可愛かった。
父親がヒーローであり、悪人と戦っていることを知って、やっぱりお父さんは良い人なんだ、と誇らしく思う娘に感情移入せざるを得ない。
個人的には、「子供(娘)だけが知っていて、大人は誰も知らないヒーロー」で、影ながら世界を救っている、みたいな設定だったらもっと胸熱。
最後、亜原子にまで縮小してしまうとこは、もっと絶望感が欲しかった。どうせ助かるんでしょ、って感じだったので。
これに近い設定は、インセプションでの「奈落」とか、インターステラーでの「ブラックホールの中」で、どちらももう助からない的な絶望感がうまく出ていた。
あと、この設定の話は、大きなスケールの中での話にしちゃうと面白さがぼやけてしまうと思う。その意味で、アベンジャーズとは切り離した映画の方が良かったと思う。
ものすごい軍事兵器が世界を変える、みたいな大きなスケールの話と、ミクロでの戦いってのが、なんだか不釣り合い。
世間には知られていないけど、実はこんな戦いがミクロの世界であったんだよ、くらいの方がいい。
まあ、もともとアベンジャーズに出す予定のヒーローだから仕方ないのかもしれないけど…。でもアベンジャーズの中でのアントマンって、はじめから脇役的な位置づけが確定してる感じでなんかシラける。