劇場公開日 2016年4月9日

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「喜びも悲しみも緩い笑い」モヒカン故郷に帰る 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0喜びも悲しみも緩い笑い

2016年11月23日
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鑑賞方法:DVD/BD

笑える

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タイトルと大まかなあらすじだけ木下恵介監督の往年の名作を彷彿させるが、話は完全オリジナル。
モヒカン頭のヘヴィメタバンドのボーカルが故郷の超ド田舎の小島に帰る。
カルチャー・ギャップは勿論の事、全編通してクスクス、クスクス、絶妙な間合いの緩~い笑い。
主人公が東京のバンド仲間に書いた手紙、“死”を強調してるバンドのくせに、それとは正反対の手紙の締め括りの言葉にメチャウケた。
沖田修一監督のこの感じ、いつもながらツボにハマる。

島民呆然唖然のヘヴィメタバンドをやって意気揚々と東京に戻るのではなく、妊娠した恋人を連れて結婚報告に来た筈が、父が末期癌だと分かって…。
暫く疎遠だった父の為に、父が死ぬまでにしたい事を実現させようとする。
ここで非常に気に入ったのが、ベタな難病&感動の家族物語にならず、ずっと緩~い笑いのまま。
息子が父憧れの人に扮したシーンはホロリとさせるものの、ピザの件や最後なんてドタバタ喜劇。
人生は喜劇。あざといお涙頂戴劇なんかより遥かにリアル。
その上で、不器用な息子と父、家族の関係をほのぼのと、しみじみと、描いてみせる。

表情も感情もモヒカン頭も変わらない、いい意味でいい加減な主人公。個性的な役をやってこそやはり光る松田龍平の個性。
父=柄本明、母=もたいまさこ、演技の巧さは勿論、その顔合わせだけでも笑いがこぼれる。しかも、息子に同じ名前を付けるほどの永ちゃん命の父、熱烈なカープ女子の母というおまけ付き。
ちょっとオツムが弱い今時の女の子の主人公の恋人を、前田敦子がナチュラル&キュートに。彼女もまた個性的な役を演じれば、まだまだ新たな魅力や一面を見れそう。
父が指揮する中学吹奏楽部の唯一の男子部員の何処にでも居そうなフツーの無個性もナイス。

大きな出来事も起きず、大笑いも無い。
つい忘れてしまいそうになるけど、ふとした時に思い出して、クスッとほっこりさせてくれる。

近大