劇場公開日 2016年4月9日

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モヒカン故郷に帰る : インタビュー

2016年4月4日更新

前田敦子が語る妊婦、そして理想の嫁姑関係とは?

女優・前田敦子が、松田龍平と夫婦役で共演した沖田修一監督の最新作「モヒカン故郷に帰る」で少し世間知らずだが憎めないキャラクターの妊婦・由佳を瑞々しい感性で演じている。広島・下蒲刈島での撮影を満喫した前田が、妊婦について、そして嫁姑の関係性について感じた現在の心境を、映画.comに語った。(取材・文/編集部、写真/江藤海彦)

本編冒頭、ライブを終えて深夜に帰宅した主人公の田村永吉(松田)が眉間に皺を寄せて眠る恋人の由佳を見て、込み上げてくる笑いを抑えようともせずに見入るシーンがある。永吉のみならず、見る者の凝り固まった筋肉を弛緩させるようなナチュラルな振る舞いだが、そこには沖田監督のこだわりが隠されていたと前田は話す。

「監督の奥様がそうだったらしいんですよ。奥様の妊娠中の様子がすごく興味深かったみたいで、観察されていたんでしょうね。その時のことをリアルに、こと細かに教えてくれました。由佳には、それがスパイスとして入っているんですよ。演じていて、もう楽しくてしょうがなかったです」。

そう朗らかに笑う前田は、筆者が取材で訪れた下蒲刈島の撮影現場でも笑顔を絶やすことはなかった。ウエディングドレスに身を包んだままの状態で昼食をともにしたが、「監督は私から出てくるものをそのまま受け取ってくださるんです! 『台本を気にしないでください。あるようで、ないものですから』ともおっしゃってくれました」と満面の笑みを浮かべる姿に、周囲のスタッフも安堵の表情を隠しきれない様子だった。

役作りでも悩むことはなかったようで、「監督が具体的なヒントをくださったので、それをどう拾っていくかを考えていた」という。自らの役どころに関しても、「由佳は話し方がギャルっぽくてちょっと“おバカ”なんだけど、すごくいい子。涙もろいっていう裏設定もあったのですが、ひとりで迷うことはありませんでしたね。『こっちにしましょう。あ、やっぱり最初のほうがいいですね。それでいきましょう』っていう感じで。一緒に探してくれる感じが、とてもありがたかったです」と説明する。

映画は、瀬戸内海にたたずむ島を舞台に、由佳の妊娠を報告するため数年ぶりに帰郷した売れないバンドマンの永吉と昔かたぎの頑固おやじ・治をめぐるハートフルコメディ。久々に会う永吉に悪態をつきながらも孫の誕生が嬉しくてたまらない治は、大宴会のさなかに倒れ、検査の結果ががんと判明して余命宣告を受ける。うろたえる永吉は、父の喜ぶ顔が見たい一心で奮闘するが空回りを続ける。

今作で妊婦役にも初挑戦したわけだが、「この役に限っては、妊婦さんがどういうものなんだろうというのを知る必要がないのかなって気がしたんです。すごく前向きな女の子なので、あえて妊婦さんってどうなんだろう? という先入観は作らず、あまり探さないようにしていました」と振り返る。だが、「撮影を終えてからは、街中で妊婦さんに目がいっちゃうようになりましたね。当たり前ですけど、人によって全然違う。お腹が大きくて『ふう…』と一息つきながら歩いている方もいるにはいるのですが、普通に歩いている方のほうが多くてビックリしました」と明かす。

前田が息吹を注いだ由佳は、料理が不得意で奔放な性格ということもあり、当初は永吉の家族たちを戸惑わせるが、次第に心を通わせて島の人とも仲良くなり、田村家のムードメーカーとなっていく。永吉の母・春子に扮したもたいまさこは、前田を「本当にかわいくて仕方がない。彼女のようなお嫁さんはとっても楽しいと思う」と絶賛するが、一方の前田も現場では“まさこ様”と呼び続けるなど、すっかり“嫁姑”の関係を堪能した様子だ。

「もたいさんと嫁姑という立ち位置でお芝居をさせていただいて、『私もこういう感じだったら幸せだろうなあ~』って思いながら疑似体験を楽しませてもらっちゃいました。あんな嫁姑の関係、素敵だし最高じゃないですか。なんてかわいいんだろうって羨ましくなっちゃいますね」。

姑との良好な関係はほほ笑ましい限りだが、肝心要となる“夫”との日々はどうだったのだろうか。松田と前田は「伝染歌」(2007)に出演しているが、共演シーンがなかったため実質的に初めて対峙したことになる。

「最初は本当にまじめな人なんだなあって思ったんです。『ホテルに帰ってから何をしているの?』と聞いたら、真顔で『毎日台本を読んでいる』って言うんです(笑)。現場ではすごく真剣だし、作品に対しての愛情があるから、そうなんだろうって感じてしまうんですよね。そうしたら、そこまではやっていなかった(笑)。そういうユーモアがある方なんですよ。でも、どんなにプレッシャーがかかる状況でも楽しんでお仕事をされているという印象を覚えましたね。本当に素敵な俳優さんです」。

次は、義父にあたる治だ。演じる名優・柄本明は、前田がプライベートでも親交がある俳優・柄本時生の父ということもあり、事前に話を聞いていたようだ。

「時生からは、すごく厳しい方だって聞いていたんですが、そんな気配は全く感じず、すごく面白い方でした。明さんは監督のことをとても信頼していらして、一緒に何かを作る楽しさを感じていらしたのかなあって感じました。そんな明さんを見られて、私は幸せでしたよ」。

今年は今作封切り後、ドラマ出演が続く。宮沢りえが主演するWOWOWのドラマ「グーグーだって猫である2 good good the fortune cat」(犬童一心監督)では、主人公・小島麻子(宮沢)のアシスタントであるミナミ(黒木華)の仲間で、独立を考え始めたミナミの後任として麻子のもとへやってくる飯田に扮する。さらに、TBSの深夜ドラマ「毒島ゆり子のせきらら日記」には主演し、超恋愛体質の政治記者という役どころに体当たりで挑み新境地を開拓する。

「全く違う役をやれることが楽しみで、新しい挑戦ができるなあって感じています。あとは、これからもお仕事の面でいい出会いがあるんじゃないかっていう期待もしているんです。今はすごくいい感じでマイペースな私がいて、色々なことが安定してきたんでしょうね、自分のなかで」

女優という仕事をこよなく愛する前田は、マイペースにと言いながらも演じることにどこまでも真摯な眼差しを注ぐ。7月に誕生日を迎えても、まだ25歳。淡々としているようでいて、貪欲に吸収を続ける姿は頼もしさすら感じる。本格的に女優として活動するようになってから3度目の春を迎えた前田が、どのような監督陣と現場をともにしていくのか興味は尽きない。

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