「ヘレン・ミレンの演技力がすばらしい」黄金のアデーレ 名画の帰還 Roy60Jinさんの映画レビュー(感想・評価)
ヘレン・ミレンの演技力がすばらしい
本映画は、名画の所有権をめぐった裁判ものであるため、現実にはダイナミックなシーンはさほどないのだと思う。しかし、過去の回想や歴史を随所に効果的に入れたことで、映画全体に緩急がつき、飽きずに観れた。歴史に対する理解も深まり、観ていて楽しかった。それでも、一番の見所はヘレン・ミレンの演技力だったと思う。
おそらくマリアが亡くなってから書かれた脚本であるためなのか、弁護士のランドル視点で物語が進み、ランドルが味わった挫折や屈辱、苦悩はきめ細かく描かれていた。しかし、もう一人の主人公のマリアに関しては、回想を細かく描いていたが、現実での心情描写が不足気味で、なぜマリアがそういう行動をとったのか、心情の変化があったのかがあまり説明されていない。そのため、納得がいかないまま物語が進むシーンも出てくる。しかし、さすがはヘレン・ミラーで、そういう不足している心情描写を、仕草や顔の表情、声の張りで補い、主人公の存在感を強く示し続けたことに感激した。
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