「今年のベストワン!」黄金のアデーレ 名画の帰還 ミアさんの映画レビュー(感想・評価)
今年のベストワン!
ウイーンで裕福なユダヤの一家に生まれ
ナチスによるオーストリア併合により
理不尽な略奪・迫害を受け
愛する家族を残してアメリカへ亡命したマリア。
亡くなった姉からの手紙で
彼女の心の奥深くに閉じ込められた過去が蘇る。
ナチスに奪われ、
その後、オーストリアのモナリザと讃えられた
「Lady in Gold」
彼女にとっては愛しい伯母アデーレの肖像画。
姉は、その絵の返還を
オーストリア政府に求めようとしていた。
彼女と同じく亡命した友人の息子が
駆け出し弁護士になったと聞き
彼女は姉の遺志を継ぐ事を決意する。
最初は絵の推定価格が
1億円以上である事に興味を持ち、
彼女の弁護を引き受けた
若き弁護士ランディ(ライアン・レイノルズ)
マリアと共に降り立った石造りの街は
時を経て住人が変わっても、
そのままの姿で存在し続けていた。
街自体が意志を持つ生き物のように。
ランディの祖父が生きた場所
彼らの身内が受けた非道の仕打ちを実感する内、
彼の中に悲しみと怒りがこみあがる。
石畳の奥から先祖の呻きが立ち昇る様が見えるようだった。
今回は抑えた演技のダニエル・ブリュールが演じた
ジャーナリストのフベルトゥスが、
何故彼らを助けたかは最後に明かされる。
心の平安を保つために封印した過去、
煉獄の苦しみを味わった祖国に降り立つ事が
どれ程の苦痛を伴うのか・・
忘れてはいけない過去に向き合うこと
許すことにより、許されること・・
ヘレン・ミレンはマリアを誇り高く繊細に魅力的に体現した。
熟練の職人達が創った、みごとな映画だ。
見終わって拍手したい衝動にかられた。
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