「君たちはどう生きるか、的な。」太陽 syu-32さんの映画レビュー(感想・評価)
君たちはどう生きるか、的な。
KBS京都の「ウィークエンド指定席」での放送を鑑賞。
太陽の光を浴びると死んでしまう新人類“ノクス”と、私たちと同じ人類である“キュリオ”。ふたつの人間が存在する世界で、マジョリティーであるノクスが経済と文明を支配し、キュリオは山間の居住区に押し込められて、文化程度が退化した暮らしを送っていました。
そこから生まれる差別と偏見、貧富の差、優劣の意味、種族を越えた相互理解が、とても生々しく描かれていて、観る者に突き付けるような作品でした。現在社会の抱える問題の縮図だな、と。
SFですが、日本映画らしい、何かのガジェットが出て来るわけでも無く、ただただ重苦しい近未来設定のみで引っ張るディストピア物。
映画を観ているというよりも、舞台を観劇しているような感覚でした。俳優たちの演技も若干過剰だな、と。原作が舞台劇だと知って納得です。
山間の村、境界のゲート、ノクスの住む街、という3つのシチュエーションのみで進行して行くのも、舞台っぽいなぁと思いました。
多用される長回し、全体を俯瞰し続けるような画面づくりが特徴的な作品だな、と感じました。これもやっぱり舞台っぽいなぁ…。では、映画にした意味は? …という疑問が頭をもたげました…。
鉄彦、結、森繁のトライアングルが織り成すドラマが絶妙だな、と。
ノクスというよりも、“文明”に対する憧れが強い鉄彦。自分たちだけの力で、世界を変えることができると信じる結。ノクスでありながら、どこかしら虚無感を抱いている森繁。
どう生きていけばいいのかを探りながら、現状を打破したいという強い想いを持っていて、それぞれに感情移入できるところがありました。
彼らの関係が波乱をもたらし、一筋縄では行かない問題が浮き彫りにされ、壮絶さを伴いながらも、希望あるフィナーレへと突き進む様に引き込まれました。