劇場公開日 2015年5月23日

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「ロボット映画の仮面をかぶった「人間ってなんだろう?」な映画」チャッピー cani tsuyoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ロボット映画の仮面をかぶった「人間ってなんだろう?」な映画

2015年5月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

萌える

犯罪都市と化した南アフリカのルクセンブルクにてとあるロボット企業が人型警察ロボットの開発に成功。
人型警察ロボットの普及により犯罪率は減少の一途をたどる。
そんな中、開発者のディオンはより「人間に近い」ロボットを作るため、AIを開発する。
そのAIを試すべくスクラップ前のロボットにインストールしようとするのだが、ギャングにロボットを強奪される。
ギャングに脅され、スクラップを修理したついでにAIをインストールするするのだが、そのロボットは赤ちゃんと同じ。
そんな赤ちゃんのようなロボットをギャングが教育し、立派なギャングに育てようとするのだが…

というようなギャグっぽいストーリーなのだが、ギャグ映画ではなく「教育とは何か」「善悪とは何なのか?」「人間とはなんなのか?」というテーマを考えさせられる映画だった。
そのすべてのテーマに通底するのは「環境」というものだろう。
教育をする側は自身の教育されたバックヤードからしか子供に教育を施せない。それによる良い影響も悪い影響もあるが、教育される側はその環境を選べない。(教育される側は悪い影響でも良い方向に転化することは可能かとは思うが)
しかし、面白いのは教育する側が母性や父性により「親になる」ということも環境がなせる業だろう。
また善悪も先天的な環境により、擦り付けられるものである。
最初は赤ちゃんのチャッピーは善悪を二元論で解釈しているが、徐々に善悪のトレードオフを行ったり、善悪を超えたい瞬間などが出てくる。
これは環境を超えるという意味で。人間の成長を目の当たりにしているようだった。
そして「人間とはなんなのか?」というのも、我々人間は作ってきた環境=社会、歴史により人間という生物的な定義をしてきた。
しかし、ソフトウェアとして思考・感情を持った高度なAIが発達したら、ロボットという肉体的な環境下であろうともはや人間なのではないか?と思ってしまう。
むしろ映画にも出てくる嫉妬に狂って人間性をなくした人間よりもチャッピーは人間だろう。
映画だけでなくグーグルの「人間は500歳まで生きられる」という発表や、偉人AIを開発して判断を仰ごうとしている現実社会を見るだに、ますます「人間の定義」を考えさせられるのだろう。

まあこんな重たそうなテーマだけど、娯楽作品としても楽しめる感じは最高だ!
トラッドとベースミュージックがギャングスタテイストにマリアージュした音楽がガンガン流れるなか、ロボのチャッピーがギャング喋りとラッパーぽい歩き方するだけでも最高だYo!!

cani tsuyo