ハイネケン誘拐の代償のレビュー・感想・評価
全7件を表示
失ったものは大金より欲しかったものなのか
誘拐の素人がお金持ちを誘拐するも、逆に人質に振り回される。
邦画でも岡本喜八監督で北林谷栄が超お金持ちのおばあちゃんをチャーミングに演じた『大誘拐 Rainbow Kids』があったが、こちらはシリアスで実際の事件が基。
ビール王、フレディ・ハイネケン。
1983年に起きたその誘拐事件。
当時個人としては最高額の身代金が要求。
その犯人はプロの集団や巨大犯罪組織ではなく、犯罪に手を染めた事も無い幼馴染みの5人の若者であった…。
リーダー格が仕事に行き詰まり、人生一発逆転を賭けて、無謀とも言える誘拐を計画、実行。
一応計画は練ってあるものの、ほとんど行き当たりばったり。が、驚くべき事に、誘拐に成功!
後は要求した身代金が支払われたら完璧だったのだが…。
1ヶ月近く経っても身代金が支払われない。
警察はちゃんと捜査してるのか、ハイネケンの会社は経営者を心配し身代金を支払う気が無いのか…?
いよいよ仲間内でもイライラや不安が募り始める。
現状維持、ハイネケン解放、ハイネケンを殺せ、そもそもやるべきじゃなかった。…
さらにそこに、ハイネケンの傲慢な言動…。
やっと身代金が支払われる事となり、再び好転したかと思いきや…。
今も謎めいた部分があるというこの事件。(あ、勿論、事件については全く知らなかった)
事件の顛末は描かれているが、事件の捜査視点やどうやって事件が解決したかは描かれていない。匿名の情報があって、犯人たちの特定や事件解決になったとか。
事件を捜査側から見たかった人には期待してたものとは違うかもしれないが、本作はあくまで犯人たちに焦点が絞られている。
絆や友情が固かった若者たち。
犯罪に手を染めた時点で、それが崩壊する事は目に見えていた。
が、彼らには見えていなかった。大金という欲に目がくらんで。
大金を手に入れた事は出来たものの、結局は逮捕。
失ったものの方があまりにも大きかった。
それは大金より欲しかったものなのか…?
友情、自分の人生…。
彼らの末路は哀しいが、自業自得でもある。
犯人たちを翻弄したハイネケン。
でも、単なるワガママジジイって感じ。
せっかく“ハンニバル・レクター”なのだから、もっと知的で圧倒的な存在感あるキャラ彫りをして欲しかった。
先述通り、謎めいた部分もある事件。
事件の詳細が明かされるのも興奮だが、事件がひと部分謎のままなのも魅力。
それもまたミステリー。
実話ベースの脚色不足
実話作品は、こんな事ホントにあったんかいな!という驚きや、こんなバカな奴いるか普通!という笑いが元々あれば、そこだけクローズアップして観せれば面白いが、この作品の様に、一つの事件の顛末を一通り流されても面白くない。
実話ベースのフィクションとして、もっとホプキンス御大に暴れて欲しかったが、実在の大企業のご機嫌も損ねてはいけない事情もあったのかも。
なのでホプキンス御大が食べちゃうのはバンバンジーで、
実話に基づく誘拐もの。 建設事業を営み、金に困窮する仲間うちで富豪...
実話に基づく誘拐もの。
建設事業を営み、金に困窮する仲間うちで富豪ハイネケンを誘拐しようと発展。
スムーズに事は運ばず、初期投資をして準備を万全にするやら、なかなか交渉が発展しないやら、そういった素人ならではのリアルなしろどもどろ感が強いて言うなら特徴。
対照にハイネケンのアンソニー・ホプキンスは最初から全く動じることもなく、完全に彼のペースにのせられる誘拐犯たち。
その後淡々とことは進み、金を得るものの仲間われ、そして順にとっつかまっていく。
なんだかこの辺がもっと凄惨な感じに演出できてると、〆であるハイネケンの「裕福とは、金を持っているか、友情かだ、どちらもは手に入れられない」のメッセージに繋がると思う。
邦題からしておちゃらけコメディかと思ったけど、とくにそういったテイストもなかったです、はい。
編集が無粋
友情で結ばれた犯人グループが、老獪なハイネケンにじわじわと突き崩されていく心理サスペンスかと思ったけど、実際には勝手に仲間割れが始まっただけという印象。
父親がハイネケンで働いてたとか、ヒッピーに建物を取られたとか、その辺の社会情勢をもうちょっと掘り下げてたら、面白かったかもなあと思う。
「豊かさには二種類ある。金か、友情か、しかしその両方はあり得ない」(意訳)という台詞はとてもよかったのだが、冒頭・中盤・ラストと三回もリピートするのは無粋だと感じた。いい俳優は、たった一度言うだけで、その台詞が重要であると観客に分からせることができる。まるで名優アンソニー・ホプキンスの出演に監督がはしゃいじゃったみたいで、居心地が悪かった。
なかなか面白かったです
前評判は、アンソニー・ホプキンスの主演作のような売り方ですが、犯人側に視点のあるサスペンス映画でした。破綻していく様子がきちんと描かれていて、心理の綾が映像に織り込まれてもいて、なかなか楽しめましたよ。気軽に観るといいかもです。
印象と違って。。。
他の方と重複してすみません。
ポスターではアンソニー・ホプキンス中央に大きくあるし、ある情報番組での紹介でも面白そうだったので行きました。
私の印象では、アンソニー・Hはそんなに出てこないし、ポスターにある「事件の裏でいったい何が起きたのか」の裏ってなんだったのか、私の理解不足。。。
終盤で主犯が彼女に連絡を取るシーンは、ありがちだし、あ~なることはこの事件を起こした時点で分かることなのに。。。
彼女と切ない思いをしたにも関わらず、結局結末う~ん(><)って感じで、こう思うのも、犯人たちに何も感じるものが無かったからかなぁ~~と、自分の感性の鈍さを痛感しました。。。
金の相談は親友とはするな
不満点の方が多くなっちゃったので最初に書くが、
映画の出来は「可もなく不可もなく」という印象。
重厚なサスペンスを目指しているかと思いきや
オープニングからして雰囲気はシャープで、話の展開もスピーディ。
事件のあらましとか犯人達の焦りが募っていく様子とか、
面白い点もあるので最後までつまらなくはない。
ただなんというか、全体的に展開が早過ぎる気がする。
サスペンスを期待させる要素はいくつもあるのに、それらをすごく淡白に処理しちゃってるというか。
例えば資金調達の為の強盗シーンも『いよいよ計画開始!』という見せ場だったのに、
犯行前の緊迫感を特に煽ることも無く、サクッと始まってサクッと終わってしまうし、
隠し部屋に監禁されていたハイネケンと運転手が間一髪で救出されるシーンや、
最後まで逃げ延びていた犯人2人が捕まるシーンとかも、もっとじわじわ緊張感を高めて欲しかった。
.
.
人物描写もアッサリだ。
リーダー格の妻に係わる部分は割と丁寧に描かれていて、最後の電話のシーンとかも良かったのだが、
その他の犯人達の抱える事情とか、なにより彼らの仲間意識とかはあまり深く描写されていない。
「“裕福”には2種類ある。大金持ちになるか、多くの仲間を持つかだ。両方持つことはあり得ない」
物語の締めにも使われたあの台詞は印象的だったが、主人公らの仲間意識が掘り下げられていれば、
計画が破綻し始めてからの仲間割れも、より心に迫るものになっていたんじゃないかしら。
.
.
あと、あんまり予告編を信用しないようにしている自分ではあるが、
それでもホプキンスの役にここまで見せ場が少ないとは思わなかった。
予告編では、ホプキンス演じるハイネケンが犯人達を翻弄するような不穏な空気を放ちまくってたが、
本編はホプキンスの存在感を持て余し気味。主人公達が追い詰められるのは自分たちのミスゆえで、
ハイネケンは彼らの犯行にそんなに悪影響を及ぼしてはいない。むしろ協力的。
犯行を迷わせるように説得するとか、一味を懐柔しようとするとか、あるいは解放後のハイネケンが
一味を追い詰めるよう警察に協力するとか、そういうシーンがあるもんだと思ってたんだけどなあ。
『主人公たちはどこから警察にマークされていたのか?』という疑問も答えが提示されると思いきや、
『匿名の電話で――』というこれまた消化不良な答えがテロップで示されるのみ。
まあ実際の事件が基である以上、物語展開で冒険はしづらいのかもしれないが……
もう少しハッタリかましてもバチは当たらないんじゃないかと思ってしまう。
それならそれで『事実と違う!』と批判が出るかもだけど。
.
.
というわけで、
面白そうな題材をサクッとまとめてはいるが、
生真面目に作りすぎたのかもうひとつ気持ちの走らない出来。
まあまあの3.0判定で。
<2015.06.13鑑賞>
.
.
.
.
余談:
予告編を観て、岡本喜八監督の快作『大誘拐』を思い出した。
あの映画のおばあちゃんくらいにホプキンスが大暴れしたら面白かったのに……
要求額吊り上げるとか警察と自分が交渉しちゃうとか……
それじゃあ史実ガン無視のコメディになっちゃうけど。
全7件を表示