■イスラエルの老人ホームに暮らすヨヘスケルは、若い頃から発明が趣味。
望まぬ延命治療に苦しむ親友マックスとその妻ヤナの要望を受けた彼は、自らスイッチを押して最期を迎えられる安楽死装置を発明し親友を安楽死させる。
だが、彼が作った装置の評判は瞬く間に老人ホーム内に広がり、ある男から依頼を受けたりするが、妻のレバーナは認知症が進んでいた。
◆感想
・ご存じの通り安楽死と言っても、積極的安楽死と、医師幇助自殺と、消極的安楽死がある。今作で、ヨヘスケルがマックスに行ったのは、そのどれでもないが積極的安楽死に近いかもしれない。だが、イスラエルでは違法である。
・というか、高齢化が進む先進国でも安楽死を認めている国はまだ少ない。日本も違法である。一方で、東京に実家がある部下に聞くと、関東近郊の高齢者施設はどこも空き待ちだそうである。火葬場も、順番待ちだそうである。
東京、一極集中の見えない問題点であろう。
・今作は、そんな深刻な問題をどこかユニークに描いている。マックスを送った後に、皆で泣きながら運転していると、お巡りさんにスピード違反や、携帯電話を使っていた事で、違反切符を切られそうになるが、皆、泣いているのでお巡りさんは見逃して上げるのである。優しいなあ。
・認知症が進んだレバーナが、施設の食堂に裸で来てしまい、恥ずかしくて涙を流す姿を見て、ヨヘスケルやヤナたちは、夜、裸でビニールハウスでレバーナを慰めるのである。優しいなあ。
<当たり前だが、人は誰でも老いる。だが、老いても尊厳はある。故に、ラストのヤナの選択を私は支持する。愛する夫の発明した機械で、安楽に逝けるのだから幸せではないかな、と思ったのである。
ところで、そろそろ日本国政府も、高齢化の喫緊の課題に真剣に取り組む時ではないかな、と思ったのは私だけだろうか。
国会では、医療費控除などは議論されているが、人間が人間としての尊厳を保ったまま、天に召される仕組みをそろそろ真剣に考えないと大変な事になっている現状を変えられないのではないかな。>