「【”Sunday Bloody Sunday. "今作はアメリカ公民権運動の潮流を大きく変えた1965年のセルマの大行進を悩めるキング牧師の姿と共に描き出した逸品である。】」グローリー 明日への行進 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”Sunday Bloody Sunday. "今作はアメリカ公民権運動の潮流を大きく変えた1965年のセルマの大行進を悩めるキング牧師の姿と共に描き出した逸品である。】
ー ”Sunday Bloody Sunday”ご存じの通り、アイルランド出身の世界的バンドU2の超名曲である。北アイルランドで起きたデモ行進中の市民が、イギリス兵に銃撃された事件に対し、激烈な怒りを持って発表された曲である。
が、アメリカにも「血の日曜日事件」が有った事を、私はこの作品で知った。
映画とはもちろん娯楽であるが、知らざる歴史を学ぶ事もある稀有なるモノなのであると、久方ぶりに認識した作品である。-
■1965年。キング牧師は、黒人の有権者登録妨害に抗議して500人以上の黒人同志と共にアラバマ州セルマからデモ行進を開始するが、行進に加わった人たちを白人の州警察と民兵が殴り倒す映像がテレビで放送され、全米が衝撃を受ける。
だが、一方ではキング牧師は一向に進まない公民権運動と、頻繁にかかって来る脅しの電話や、活動に時間を割くために妻との距離が出来て行く事実に苦悩していた。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・序盤は観ていてキツイシーンが続く。黒人の女の子4人が教会に仕掛けられた爆弾に吹き飛ばされて亡くなるシーンや、黒人青年が様々な権利を主張して警官に射殺されるシーンなど、黒人の権利獲得を描いた映画の序盤は大体キツイ。
けれども、今作はブラッド・ピットの「PLAN B」が製作に加わっている。「PLAN B」は今作の前年に「それでも世は明ける」(この作品は、偶々映画館で観て非常に感銘を受けた。)を制作、公開しており高い評価を受けている。
私が、ブラッド・ピットが好きなのは勿論格好良い事が一番であるが、映画人としての世に対するスタンスも一因である。
■今作がムネアツなのは、前半アラバマ州の知事ジョージ・ウォレス(ティム・ロス)による黒人差別が続く中、黒人たちが耐えに耐える姿を的確に捉えつつ、その反動で中盤から徐々に白人も参加した”セルマの大行進”に繋げる描き方である。
特に、実際の”セルマの大行進”の映像を使っている所は、効果的である。
そして、アメリカの世論はアメリカ公民権運動の潮流を大きく変えて行くのである。
<今作でアメリカ公民権運動の指導者キング牧師を演じたデヴィッド・オイェロウォは、キング牧師が抱えていたプレッシャーや、自身の家族への脅迫や妻との関係に悩みながらも活動を辞めなかった姿を見事に演じている。
今作は、観て良かったと思える、貴重なる歴史映画だと思います。>