「ひ弱で幼稚な男なんか、お墓に入るまで要らないんだからね! 私といたいなら、それまで黙っててくんない?」マイ・インターン さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
ひ弱で幼稚な男なんか、お墓に入るまで要らないんだからね! 私といたいなら、それまで黙っててくんない?
本作の監督であるナンシー・マイヤーズは
"ハート・オブ・ウーマン"
"恋愛適齢期"
"ホリデイ"
"恋するベーカリー"と、キャリアのある女性の恋を、人生を、お洒落に、コミカルに描くのに定評のある監督ですよね?かなり好きです。
特に脚本で関わった作品の"プライベート・ベンジャミン"とか、"赤ちゃんはトップレディがお好き"とか大好きなんです!
でも、本作は、コミカルでありながら、お洒落でありながら、同時にちょっと辛辣でぶるぶるしました。
皆さん、もうご覧になりましたよね?
でも一応あらすじは、こんな感じですよ。
ジュールズ(アン・ハサウェイ)は、急成長したアパレル通販サイトのCEO。
まだ小さい女の子の母親だけど、夫が専業主夫やってくれてるので仕事に専念できる環境です。ええ、夫は噂のイクメンですよ。
そこに、会社の高齢者雇用プログラムの一環で、ベン(ロバート・デニーロ)が"インターン"として入社してきます。しかもジュールズの直属の部下で。
最初は40歳以上年上のベンに戸惑うジュールズでしたが、お仕事も人生の経験も豊富で、笑顔を絶やさず、鋭い観察眼を持ってはいるが、説教臭くなく、必要な時にそっと控えめに手をさしのべ、親切で、雑務も嫌な顔をせず、ジュールズへの尊敬の念を忘れないベン。
ベンは実は天使でした!って落ちだったらどうしようって思いました。
そんなベンを、若者社員は慕い始めます。勿論、ジュールズもです。
「使えない若い子に気を遣いながら、おだてながら仕事するより、こんな素敵で経験豊かなおじ様に、痒い所に手が届くサポートをして貰えれば、どんなに仕事が楽でしょうねー」
っていうね。
ええ、理想です。キャリア女子にとっては、理想の部下です。夢です。
でも、これ以降、暗雲垂れ込めるんですよ。
ドーン!
ジュールズのイクメン夫が、ママ友と浮気するんです。
毎日夜遅くまで会社に居て、家にまで仕事を持ち込むジュールズに夫が言うんです。
「自分の時間が欲しいんだ」って。家事と子育て、たいへーん。
んで、この浮気を知ったジュールズの台詞が、こうです。
「(離婚すると)1人でお墓に入るのが嫌!」
号泣して言うんですよね。
うわわわわわ……って、なりました私。
バリバリお仕事できるジュールズが見せる、女子の可愛い部分!とは、私はとれなかったんですよ。
200人の社員を率いるお仕事できるキャリア女子なら、断崖絶壁だって1人で登れるよ!寧ろひ弱な男は、邪魔!だから登ってる最中は要らないの。到着地点=墓の瞬間だけいればいいのよー。みたいな。
結局ジュールズは、夫の浮気も許すんです。
夫も「別のCEOを雇ってジュールズの忙しさを軽減して、夫婦の時間を作る計画もせんでいい」と言ってくれます。
君はがんがん崖をよじ登れ!と。俺は墓で待ってるよ、と。いう、苦渋の選択をします。
夫はジュールズと結婚するまで、将来有望なプログラマー?だったんですよね。けど、ジュールズの事業を優先して、家に入ったわけです。
しかし、今までの環境を何一つ変えようとしないこの夫婦が、一緒にお墓に入れる確率って、いかほどでしょうねー(笑)
だって、ジュールズの家庭の問題って、何も解決してないもん。
そしてキャリア妻は、人生経験も仕事の経験も夫より上のベンに、精神的に頼り始めています。
ジュールズは言います。
「なんで最近の男は幼稚になったの?」
本作は、現代のキャリア女子は、同年代の幼稚でひ弱な男性を必要としていない。
対等に話せるのは、年上のできた大人の男だけなんだ!と言っています。たぶん。
いや、必要とされたいなら、男性諸君は我慢に我慢を重ね"お墓"まで待ちなさいよー!って。
いや、これ、第一線で活躍してきた、66歳のナンシー・マイヤーズの本音でしょうかね。
一昔前?二昔前?のナンシー・マイヤーズの脚本の女性は、何かをきっかけに人生が180℃変わって、それで自分自身も変わって、乗り越えて、良い方向に向かう主人公が多かったように思います。
多分、今までの主人公なら、こんな男は捨てちゃう筈です。
が、現代のキャリア女子は、自分は変わらず、周りに「私はこうなんだもん!」って押しつけて、我が道を行くんですね。良いのか、悪いのか。我を通す。
デニーロはじめ、アイスが溶けたような顔つきのアン・ハサウェイ、"ピッチ・パーフェクト"でむっちゃ嫌な役だったアダム・ディヴァイン、お久しぶりのレネ・ルッソは良い感じの熟女っぷり、"ジョン・リスゴー"似の名脇役セリア・ウェストンなどなど、個性的な登場人物達は、本当に魅力的です。
けれど、現代のキャリア女子事情について何も突っ込んで描いてない点で、どうなんかなー?と思いました。
だから、ナンシー・マイヤーズが言いたいのは、そこじゃないんですよね。
本作はキャッチからも窺えるように、お仕事を頑張っている女子を応援!的なプロモーションでしたね。
「全ての女性に贈る、幸せな(?)人生のアドバイス」
もしくは「異世代交流の素敵なお話」とか。
「高齢化社会の素敵な夢物語」とか。
どれも、ちょっと違うように感じました。
個人的には「キャリア妻と対等な関係になれず、精神的な拠り所にもなれず、経済面でも妻に依存している夫=現代のヘタレ男子の象徴が、女性が活躍する世界でどう生きるべきか?」っていう、ナンシー・マイヤーズから"現代男子"への叱咤激励だと思いました。
ちょっと思い込み激しい投稿になってしまいました。お許しくださいませ。