「.」セル 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。携帯電話で感染するゾンビものロードムービー。原作者S.キング自ら(共同)脚本を手掛け、『パラノーマル・アクティビティ2('10)』のT.ウィリアムズが監督を務める。開始早々、唐突に巻き込まれるカタストロフィが、テンポ良く展開・進行する。デジタルなゾンビと云う設定はユニークだが、何より女優陣が魅力的に描かれており、“トム・マッコート”のS.L.ジャクソンは相変わらず頼りになる。ただ画的に閑散とした荒れた街並みに群れで彷徨う感染者達と最近よく見掛けるものが多く、目新しさは無い。60/100点。
・携帯を介し、一旦感染してしまうと、一応に闘争心が増し残虐になるだけで、そこに何らかの感染者側の目的意識があればもっと良かったかもしれない。
・何かに操られ、意思を奪われた民衆が大挙する様、古くは何度もリメイクされ、S.キング自身が影響も受けたと云う『ボディ・スナッチャー/恐怖の街('56)』が挙げられるし、やはりリメイクを繰り返す『惑星アドベンチャー/スペース・モンスター襲来!('53)』等、枚挙に遑が無いが、他にもS.キングの商売敵ではD.R.クーンツの『ストレンジャーズ』辺りも類似作と呼べると思う。
・『1408号室('07)』の支配人“ジェラルド・オリン”役に次ぎS.キングとは二度目のタッグとなるS.L.ジャクソンが演じた“トム・マッコート”とJ.マイケルの"Raggedy Man(赤いフードを被った男)"、原作版のキャラクターとは白人と黒人が入れ替わっている。亦“クレイ・リデル ”のJ.キューザックは(共同)製作総指揮も兼ねたが、S.キングとは『スタンド・バイ・ミー('86)』の“デニー・ラチャンス”役、『1408号室('07)』の“マイク・エンズリン”役と三度目のコンビとなる。
・当初、E.ロスが名乗りを上げ、シナリオのリライトに着手したが、途中で辞退してしまった。これについて製作側は、考え方やアプローチの相違による為、やむなく袂を分かつに至ったとコメントした。
・冒頭、空港において、マンチェスター行3598便の搭乗口が"A6"ゲートに変更になったとのアナウンスが聴き取れる──"A6"は、S.キングの代表作『ザ・スタンド('94・TV用ムービー)』に登場する“スーパーフルー”や“チューブネック”とも呼ばれるウイルスのコードネームの一つである。亦ロザンジェルス行1408便は……との案内もあり、こちらもS.キング原作の『1408号室('07)』からの引用だと思われる。
・S.キングによると、'09年には本作の戯作化を書き上げており、この際に評判が悪かった原作版のラストを本作の様に変更したのだと云う。“TR-90”に在る“カシュワク(Kashwak)”はS.キング原作の『骨の袋('11・TV用ムービー)』にも登場する。
・エンドロール時のコピーライト表記では2014年になっており、製作は少なくとも'14年中には終了、本篇はその時点で完成していた。'15年12月に(共同)製作総指揮のJ.キューザックとS.キングが配給・配信会社についてトラブルがあり、リリースが暗礁に乗り上げているとTwitter上で明かした。その後、Saban Films社が配給権を買い取り、その約一箇月後の'16年4月26日、遂にトレーラー公開に至る迄漕ぎ着けた。
・鑑賞日:2017年10月28日(土)