「凄いものを見た」NEWシネマ歌舞伎 三人吉三 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
凄いものを見た
ハマりそうだ。
歌舞伎となると敷居が高い、舞台になるとお金も高い。
だけど…これを観られるなんて、日本人で良かった。
芝居を映像で観た場合、何割かは食い足りなさを感じるのだが、これは違った。
なんの遜色もないどころか、カメラの寄り引き、編集を駆使する事により、極端に観やすくなってる。
また、歌舞伎と言えば、あの独特の言い回しを思い描くが、その節回しも世界と思えば音に煩いわけじゃなかった。
なにより、こんなに、複雑な面白い話しが歌舞伎にあったなんて思いもよらず…。
他の作品も必ず観にきたい!
勘九郎の殺陣をやってる時の顔は、とても良かった。
というか、あの刹那でさえ、歌舞伎独特の表情を作ってやってるのかと思ったら、その日々の修練に頭が下がる思いだ。
良いものを見せてもらった…。
伝統芸能には間違いないんだが、進化する伝統芸能とは天晴れである。
ただ…現代の感覚でいくと理解に苦しむ設定も多く…。
お坊とお嬢が、あそこまでの恋仲になる経緯が分からない。
同性なのは風俗としてありだったとしても、一目惚れ風でもなかったし。
夜鷹が親孝行までは頷けたとしても、体を売ってる女に世間も彼氏も頓着しなさすぎる。そういう職の女性を差別するような価値観が芽生えたのは近代なのだろうか?
んな事ないよなあ…。
性病は風俗界よりも蔓延してたって話しだし、処女である事にも命と引き換えにしてもいいくらいの価値があったんだもんな。
そう思うと、自らの選択による喪失は是で、奪われるとか辱められた尊厳が非だったのだろうか?
TVが構築した価値観以外の事を想像できたりして楽しくはあるが。
かと思えば、19の青年が子供っぽかったりで…当時ならもう立派な大人で、その年まで丁稚奉公とかだと、なんだか精神的な未熟児だったりするのかなと考えるのだが、そんな節は全くなかったり…。
そんなズレもちょっと楽しかったりはする。
最後に門を開け放てば、和尚が救えるって理由もなんだか、よく分からなかった。
いや、聞き取れなかった。
ま…結局の所、何が真実なのかは確かめる術もないので、捨て置く。