母と暮せばのレビュー・感想・評価
全178件中、121~140件目を表示
理性と感情の相克
この映画は反戦であると同時に、人間という生き物がもっている内面の二重性をも描いた映画といえるのではないか。
たとえば、死んだ息子。
フィアンセのことを愛しているなら解放してあげれば、という母親のことばに反抗する。でも、次の場面ではほんとうに自分以上に町子のことを愛しているならそれでもいいよ、という。そんな奴いないと思うけど・・・とも。
たとえば、その母親。
フィアンセが悩みつつ結婚相手をつれてきた後、息子にいう。なんであなただけがひとりぽっちにならなければならないの、と思わず叫んでしまう。その声を聞いて自己嫌悪に落ちいる。
たとえば、フィアンセの町子。
おかあさん、そんなこと言わないで、私は浩二さんに一生添い遂げるのだから。それでも、新しい結婚相手をつれていく。そして、帰りしな母親を抱きしめて、ごめんない、ごめんなさいと泣く。
この心の揺れこそが大きな見所だろうと思う。
国策によって、翻弄されるひとたち。ひとりひとりの人生。
そして、ここに登場する役者たちにも拍手を送りたい。
母親(吉永小百合)、息子(二宮和也)、フィアンセ(黒木華)の3人だけでなく、結婚相手となった浅野多忠信や、闇市から運んでくるおじさんの加藤健一の存在感、父親の消息を聞いた女の子本田望結のけなげさなど、みんな素晴らしかった。
最後のシーンは賛否両論あるが、過酷な生活を送ったひとたちに対する山田監督のやさしさだろうと、僕は解釈しました。
婆さんと、オッサンと、オーバーアクション。
三十路を越えたオッサン(劇中では十もサバを読んでいるが)が、母親(もうお婆ちゃんにしか見えない)の目の前でその布団に入って現れ、「あぁ…母さんの匂いだぁ」と言うのを観せられどう思うかが分け目の一本。
自分には其処が気持ち悪すぎて、とにかく泣くどころではなかった。
ネームバリューは別として考えて、せめて役柄に近く違和感ない俳優を邦画は使うべきだと思う、せめて。
吉永小百合氏の演技が上手いと思ったことは、過去作を観てきても一度もない(「画面の華」の人だし、近年は実年齢と乖離した役が多すぎるのもある)し、別に二宮氏の演技力に不満があるわけでもない(「青の炎」「STAND UP」の頃は最高だった)けれど。
とにかく「舞台劇」のような演技が過剰で非常にうるさく感じた。
そこに「私は自然体です!」と常に不自然な空気を纏う黒木華(舞台ならばそれでいいかもしれないけれどね)が出てくるから。
炭水化物×炭水化物の食事のように、くどい事この上なく。
そして冒頭の試金石。
何がしたいのか、言いたいのか。
旦那や長男坊には見向きもしない、歪んだ母親のはらむ狂気?
他でもない自分が言ったことを、あっさり捨てて自分を可愛がる雌のしょうもなさ?
ただただ解らない、山田洋二監督らしからぬ難解さといったら。
加えてあのラストの笑撃の演出…
頭が痛くなった、本当に。
長崎をネタにした近年でも類を見ない、邦画の珍シーン。
過去の意地と約束があるとはいえ。
実力の無いメリル・ストリープはいい加減そろそろ脇へ回ろうよと思った作品。
メリルは主演は譲らなくても、婆さんの役はやるからね。
♪映画「母と暮らせば」の活用法?
このお話の感想をどうシェアしようかと考えた時、ふと思ったのが、「お手本」…。
…モデリング(マネ)の対象にしてはどうかと言うことです。
では、何の「お手本」か?ですが、
今の社会、親御さんが代々続く「安全基地を持てない」ことによるハンディキャップ…自尊心の低さの為に自分の「安全基地」を持てない子供が増えていると感じています。
安全基地とは、そこに戻れば、安心できる、自分が守られていること、愛されている事を再確認出来る場所です。
無償の愛を感じることが出来、自分が認められ、許され、肯定される場所。信頼できる相手が存在する場所。
そんな安全基地として吉永小百合さんが演じたお母さんは、一つのモデルになると感じました。
そして、その安全基地的なお母さんに育てられた、二宮和也氏演じる次男がどんな子に育ったかは安全基地の大事さを理解するのに役立つと思います。
明るく、笑顔絶やさず主体的に愛情を注ぐ事ができる子。
遠慮無く、自分の気持を表現できる子。
もちろん、映画の中のお母さんも、次男も完璧ではないので、問題もあります。
…生きて幸せを謳歌している人を見て嫉妬してしまったりとか、
…大事にしていた存在を失う悲しさ故に相手の自由を束縛しようと
したりとか。
でも、”安全基地”があるからこそ、そんな葛藤という新しいことへのチャレンジができ、徳を積む的な私たちの原点に戻り、相手にとっての幸せのために何が一番いいのかを理解し、…自分の中に感じた奪われる恐怖から脱することができます。
…もし、そんな安全基地を知らないという人がいるなら、ぜひ、この映画の中の二人を真似ることで、まず、自分自身の安全基地を目指しては、と思いました。
この二人も、その周りの人々との関係、つながりも、全て参考になると思います。
安全基地の影響力は、代々受け継がれます。
江戸時代には、安全基地だらけだった日本も、明治維新後に出来ること、表現することの自由を奪われ、人間関係のつながりを奪われ核家族化、個人主義で自立するための忙しさ(心をなくすこと)
に没頭される中で、
…競争を通して様々な怖さにさらされ、人や自然とのつながりを絶たれ、多くの安全基地が失われつつあります。
それでも…
「安全基地は、私から復興させる」
今、生きづらさに苦しまれている方も、これからお母さんになられる方にも、ぜひ、そんな覚悟を持っていただきたいという願いを込めて、この映画をオススメしたいと思います。
若い人に戦争や原爆投下問題を考える契機の一つとして推薦
上さんが気分転換で映画を観たい、と言っていたのですが、今週、特別チェックの映画はなかった状況でした。年寄りの身で、今更、典型的ハリウッド映画の代表のような「スターウォーズ」は観たい気がしませんでした。上映中の映画の中、消去法で考えたら山田洋次監督の「母と暮らせば」が残りました。
長崎原爆を含め戦争の被害を通じて当時のありふれた悲劇の一端が良く描かれていました。もっと戦争を知らない若い人たちにぜひ観て欲しい映画と思いましたが、映画館内は高齢者が目立ちました。台詞に重みがあって、全体に松竹映画の伝統を感じることができました。
映画の中で国力差が桁違いのアメリカと戦争した愚かさを2度ほど批判していましたが、国力が同程度だったら果たして問題がなかったのか、山田監督に聞いてみたいと思いました。国力の弱かった中国への侵略戦争はどうなるのでしょうか。戦争被害だけでなく加害の面も忘れることは許されないと思います。内外、数多の犠牲者の上に、戦後日本の平和と民主主義がもたらされたことを忘れてはならないと、改めて映画を観て思いました。
どうでもいい些細なことですが、映画の中で正月の切り餅が出てくるのですが、西日本では角餅ではなく丸餅のはずと思ったのですが、どうなんでしょうか。
(^^)思ったより良かった♪ 80点
●映画『父と暮らせば』とくらべながら観るのが楽しかった♪
母が.町子のかわりに息子が生き残れば良かったと本音をもらすトコロ 良きでした。
本音を言うことで心に開放感があったのではないか?と思った。
笑いもあるけど悲しくて切ない
原爆で亡くなった息子が亡霊となって現れて…親子の温かくてほっこりするようで所々笑えるようなシーンもあって。
だけど彼はもうこの世の者じゃない。
最後にはやっぱり悲しみのほうが残る温かいけど悲しくて切ない映画。
山田洋次監督
すごい。
このテーマの映画だけどクスリと笑ってしまうシーンがいくつも入っている。
ああ、最後はせつない。ハッピーエンドにはなりようがないんだけど。
本筋ではないけれど触れたい。原爆の炸裂シーン。今まで、ハリウッド映画でも、邦画でも、SFでも、娯楽作品でも、文芸作品でも、アニメでも、幅広い分野の映像で、何回となく、核爆発のシーンは描かれてきたと思います。
この映画がもっとも怖かった。最も痛さをいや痛さを感じる間も無い衝撃を感じました。山田洋次監督すごいな。
古典
最早、作中の人々が同じ日本人には思えない…。
それだけ、今の日本は発展した。
そして、人の質や幸せの感じ方も変わってしまったんだと思う。
僕らの世代はその変換期を生きてきた。
母や父、祖母が大事にして生き方も知っている。そして、その生き方だけじゃ生きにくいって事も分かってる。
観ながらに思うのは、違和感だった。
時代劇でもない。
現代劇でもない。
外国の映画でもない。
だから「古典」なのかと感じた。
最早、歴史の中でしか語られない日本が、そこに在ったような気がした。
澱みのない台詞の応酬。語尾をわざと伸ばす事もない。
細かな心情表現。
二宮君はそんな表現をしない役者さんだったから、おそらくは監督の要求なのではないだろうか?
どこかで見た事あるけど、実際には見た事のない日本人的な仕草、動作。
昔からある風習に則って、創った映画のように見えた。
山田洋次クオリティがあるなら、そうなのかもしれない。
次作の「家族はつらいよ」は大いに楽しみだ。感じた古典感を払拭してくれそうだから。
オフクロに電話したくなった。
そんな映画でした…。
安定の演技だけど共感できなかった
吉永、二宮両名の安定した芝居は安心してみていられるものの、安定しすぎて人間味が欠けた印象。育ちの違いなのか、始終丁寧な対話を続ける親子の会話に現実味を失った。また、その調子で最後までベッタリな親子関係に親近感は湧かなかった。
彼女の為を思うこと、そして親子で一緒に居たいことが一致した結果のラストシーンなのだろうけど、母も心機一転して幸せになってほしい気持ちが多少でも滲んでいれば理解できる。
迷いなく母を道づれにした共依存親子の気味の悪さに愛情の共感は出来なかった。凝りすぎたというか盛りすぎた演出。
父と暮せば、の芝居を見たことがあるが、それとは感情移入の意欲がだいぶ違った。
ラスト以外は
全体的に悪くはなかったですがラストで全てが台無しになりました。あの合唱団がうじゃうじゃいて気持ち悪く、そのうえ振り付けも気持ち悪さを増してました。もっと違うラストがあったような気がします。
回数を重ねるごとに
私も正直最初は自分が想像したものと違ったので拍子抜けしたところはありましたが見る回数を重ねるごとに感情が重なってきました。山田監督が時には恋人のようと評された小百合さんと二宮さんの親子の演技に感動しました。お二人の表情が素晴らしかったです。そして坂本龍一さんの曲も素晴らしかった。最後の原民喜の鎮魂歌で一気に世界に引き込まれて行きました。久しぶりにサントラを買います。
全178件中、121~140件目を表示