「熱量がすごい」シン・ゴジラ ますんさんの映画レビュー(感想・評価)
熱量がすごい
ゴジラ×原爆、放射能問題という組み合わせを思いついた事が凄いし。
それを思いつくまでの時間や頭の中とか、それからの果てしない作業と段取りとか。
物凄い熱がないとできないことだろうなと。
それほどに庵野さんが訴えたいことなんだなと。
この映画の中で、皆人間の可能性を信じ諦めずゴジラに向き合ったように、制作スタッフの方々もこの映画このテーマに向かい合ったのかなと思うと、胸熱でした。
物語はかなり淡々と進む。前半は特にシュールで笑いどころもあり、全体を通して日本を皮肉るスタイルが面白い。ゴジラというキャラクター的な存在だったものを現実的に描いた所に好感が持てるしとても見やすく、設定も割とすんなり入ってきた。
実際にゴジラが現れたらこうなるだろうという再現映像を見せられてるような、ドキュメンタリーのような、でもそこにふんだんに訴えが含まれている。そのバランスが秀逸。こう淡々と描くからこそ、見ている我々も自分達の生活を連想し、置き換えて考えることができるのかもしれない。
キャストが発表された時、このゴジラといういかにも大衆向けっぽい映画の主演が長谷川博己???と違和感を覚えた。がしかし、見てみれば長谷川博己で良かったと思った。ハマリ役だった、素晴らしい。石原さとみと高良健吾のキャスティングは自分的には浮いてるように感じたが、石原さとみが凄く頑張っていたことは伝わってきたし、好感が持てた。プレッシャーが半端なかっただろうに、凄いと思ったし、今は石原さとみで良かったと思っている。個人的に最初の総理役の大杉漣さんが大好きだった。
印象に残ったのが、1番最後のシーン。冷凍されたゴジラの尻尾のアップが数秒映し出されるが、尻尾から人間の手や顔が伸びているように見える。それがかつて広島長崎での原爆や、福島原発事故で苦しんだ人たちだと思ったら、怖かったけど納得できた。
この最後のシーンがとても静かで、叫静けさの中からひしひしと叫びや訴えが伝わってきた。
キーマンの教授が残した、好きにしろというメモ。教授にとってのゴジラが、庵野さんにとってのこの映画なのかなと思った。
この映画を見てどのくらいの人がこの問題について考えたんだろう。何を考えたんだろう。少なくとも何も思わないという人はいないんじゃ無かろうか、いやいないで欲しい。
庵野さんが残したこのメモに向き合わなければどんな結末になるか、映画を見れば分かると思う。
人間の可能性を、この国の未来を諦めず、向き合いたい。